トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > 読売新聞がジャーナリストを“言いがかり”で言論封殺(後編)

読売新聞がジャーナリストを“言いがかり”で言論封殺(後編)

20080411_yomiuri.jpg騒動の発端となった黒薮氏(写真右)が主宰する
サイト『新聞販売黒書』

■拡大解釈される著作権法の危うさ

 この件でまず珍妙なのは、削除の申し立てに当たって、江崎氏が「催告書」が「自らの著作物である」という理由を掲げたことである。 すなわち、著者である自分に無断で当の「催告書」をネット上で公表したことは、明らかな著作権侵害だという理屈なのだ。

 そして、東京地裁が催告書をなぜ著作物と認めたのかについては、何ひとつ具体的な理由が明らかにされていない。  だが、問題は「催告書が著作物か否か」という議論ではなく、すでに裁判所が催告書を著作物と認定し、事実として仮処分を認めてしまったことにある。

 つまり、もし自らに都合の悪い文書や資料が公開されてしまった際に、「著作物である」と主張することによって、それらを隠蔽できる可能性が発生してしまうことになる。

 だが、はたして催告書のようなたぐいの文書を、本当に著作物として認める根拠があるのだろうか? 著作権法によれば、権利が保護されるべき著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(同第2条第1項第1号)と定義されている。一般的に考えれば、催告書といったたぐいのものは、著作物とはいえないはずだ。しかし、 この解釈について、さまざまな議論があり、その判断は決して容易ではない。著作権に関する調査研究を行っている社団法人著作権情報センターに問い合わせてみたところ、「事務的な文書だからといって、それを著作物として認められないと、ただちに判断できるものではないと思われます」(著作権相談室)との回答だった。一方、黒薮氏は、今回のケースは、著作権法で保護されるようなものではないという主張を展開している。

 調査報道において、資料の公開は、真実性を担保する上でも非常に重要な意味を持つ。もし関連資料の公開が著しく制限されることになったら、調査報道というものが後退を余儀なくさせられてしまう危険性がある。しかも、そのきっかけをつくったのが、報道機関である大手新聞社というのは、いったいどういうことなのであろうか。

 黒薮氏はこの件について、「このようなケースが法的に認められてしまったら、正しい取材や報道ができなくなる可能性が出てきてもおかしくはない。例を挙げるなら、犯人から一方的に送りつけられた脅迫状を公表したとします。でも、 犯人から『著作物だ』と申し立てられて、それを理由に違法行為とされてしまったら、脅迫状の公開すらできないことになってしまいます。そんな状況になれば、内部告発をはじめとする真実の公開がなされなくなる危険性すらあるでしょう」と、疑問と怒りをあらわにしている。

 しかも、江崎氏は記事内容に対し反論や訂正要求をするのではなく、いきなり司法制度を用いて文書を削除をせざるを得ない手段を講じたわけである。これでは、報道機関たる新聞社が言論圧殺という暴挙に出たと言われてもおかしくないのではあるまいか。

 今回の事件について、江崎氏はあらゆる取材に対して「ノーコメント」という姿勢だ。また、『My News Japan』記者の伊勢一郎氏の質問状に対して、読売新聞側はきわめてあいまいな答えしか出していないが、今回のように催告書のようなたぐいの文書が著作物として削除の対象となってしまった場合、報道活動への影響はあるのかという質問に、読売新聞側は「何ら問題はない」という旨の回答をしているのである。

 こうした「言論活動への妨害」に対して、黒薮氏は2月12日、起訴命令申請(一定期間内に本訴を提起するよう催促するもの。応じない場合は、仮処分は取り消される)を行った。つまり、そこまで「催告書は著作物」と言い張るのなら、本裁判でシロクロをはっきりさせようではないかという黒薮氏の意志である。

 これに対して2月下旬、江崎氏側が黒薮氏を著作権法違反として訴えるという旨の訴状が裁判所から届いた。論争は、法廷へと移ることとなった。

 黒薮氏は「私は、不当な攻撃に対しては断固として反撃します。 まして今回の件は、報道機関という言論人が、事もあろうに言論の自由を妨害するという暴挙に出るという、あってはならないことなんです。こんなことは許されません。徹底的に反撃していくつもりです」と意気込みを語っている。

 このような異様ともいえる状況に、わが国の言論活動、報道、そして表現の自由はどうなってしまうのであろうか。この問題には、 すでに多くのジャーナリストが黒薮氏への支持と、読売新聞への批判の声を上げている。

 裁判の第一回口頭弁論は、4月14日10時30分から、東京地裁526号法廷で行われる。
(橋本玉泉・文/「サイゾー」4月号より)

【関連記事】 他社に厳しく自社には超アマ!二枚舌・朝日新聞の偽装委託
【関連記事】 時代錯誤な新サイト? 「新s」の中身にあの大手新聞記者も苦笑
【関連記事】 企業離れが急加速中 ゴーマン日経“失墜”間近!?

最終更新:2008/06/19 23:35
ページ上部へ戻る

配給映画