対自民より激しい? 日銀総裁人事をめぐる民主党内の攻防
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日銀総裁の空白人事打開を目指して、政府は7日、副総裁の白川方明(しらかわ・まさあき)を昇格させる人事案を国会に提出した。8日には、両院の議運委による両氏の所信表明・質疑を行い、9日の本会議で採決する予定となっている。
ここまでの日銀総裁人事を巡り、政府与党は福井俊彦前総裁が3月19日に退任以降、武藤前副総裁、田波元大蔵事務次官の総裁人事案を提出したが、民主党が相次いで拒否。中央銀行の総裁が決まらない前例が生じ、日本の金融システムが世界的に見て信用されなくなる事態が生じている。福田首相は今回の白川案について、「(民主党は)同意してくれると思う」と記者からの質問には答えたが、仮に3度目の不同意となれば政権へのダメージは避けられそうにない。
なぜここまで、日銀総裁人事問題の収束に時間がかかったのか。その背景には、与党の力不足もさることながら、民主党の党内事情もあったようだ。「元々、小沢代表と武藤さんは仲良しなんです。民主党の小沢代表寄りの議員によると、小沢さんは『武藤さんで別に良かった』と話していたそうです」(民主党担当記者)
小沢代表は、元々は自民党の人間。それも旧大蔵との太いパイプを持つ田中派の出身ということも考えれば、財務省の親派であっても不思議ではない。また武藤氏は、旧大蔵省で主計局長をしていた時代に、永田町人脈とのパイプを作っていたと見られ、その当時、小沢代表とも意見交換を積極的にした仲。政策通であり、大蔵官僚特有の事務処理能力にも長けていた点が、小沢代表から高く評価されていたようだ。
ところが武藤案に関して、民主党は早々に拒否。その背景には、党内の反小沢グループをけん制する動きがあったという。「武藤さんに反対していたのは仙谷、前原、枝野の反小沢グループの領袖たち。大連立構想に続き、小沢さんが武藤さんを推すという福田政権への歩み寄りをみせれば、党内での小沢降ろしの流れが加速し、辞任はさけられなかったかもしれないというのです」(民主党議員秘書)
小沢代表としては、これ以上党内の反発を招くことは避けたいがゆえに反武藤になっていたようだ。道路特定財源も、ガソリン税、日銀総裁人事でも、自民党に徹底抗戦の様相を呈しているが、実際には民主党内の権力争いに対する代表自らの保身であり、党内の混乱を避けるための配慮だった、と見る向きが強い。
結局、党内の混乱は避けたものの、政・財界を混乱に陥れた小沢代表の決断だったわけだ。そして今回の白川総裁案だが、「可もなく不可もなく、という普通の人物」(自民党議員)と評する一方で、「財務省の天下りポストを獲得できない事態は、財務省自身は当然のことながら、自民党の財務族にも大きな痛手で、今後勢力が弱まっていく可能性がある」(別の自民党議員)と指摘する声も上がっている。
この日銀人事をめぐるゴタゴタで、「このくらいの人事もまとめられないとは情けない。財界が自民党離れをし、次の選挙は厳しくなるだろう」(財界有力者)と、さらに信用を失うこととなった福田政権。民主党にとっては都合の良い流れだが、このところ自らの“信念”を曲げてばかりいる小沢氏にとっては、後味の悪い結果となりそうだ。
(高田学)
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