ネットにはびこる“闇サイト”は法的に規制できるのか?(前編)
#事件 #ネット
昨年8月、3人の男が、名古屋市の路上で会社から帰宅途中の女性を拉致。現金を奪ってから首をロープで絞め、さらに頭を金づちで殴るなどして殺害するという、おぞましい事件が起きた。この残虐非道な事件を引き起こした3人の被告が知り合い、共謀するきっかけとなったのが、「闇の職業安定所」という、いわゆる“闇サイト”だった。
1996年2月に、猥褻な画像をネット上に流したとして会社員や高校生ら3人が逮捕されたインターネット史上初の犯罪摘発から、サイバー犯罪は増加の一途をたどり、ここ最近ではこうした闇サイトが絡んだ犯罪が多発。警察庁によると昨年1年間に、インターネットを悪用した犯罪の摘発も5473件と前年比24%増で、過去最多となっている。では、こうした事件を引き起こすきっかけとなっている闇サイトとは、一体どういったものなのだろうか?
「闇サイトとは、ひと言で言うと、犯罪を助長するウェブサイトのことです。その種類はさまざまで、殺人、暴行、レイプといった犯罪仲間を募るもの、自殺サイト、拳銃や麻薬の売買、個人情報や金融関係データの売買、ウイルスやスパイウェアを提供するものなどがあります。犯罪性の高いものほど常設のサイトである可能性は低く、ヒットアンドアウェイ方式で開設してから短期間で閉鎖するので、足がつきにくくなっているのです」
そう話すのは、『インターネット犯罪』(文春新書)の著者であるジャーナリストの河﨑貴一氏。さらに同氏は、闇サイトを利用した犯罪の現状を、こう語る。
「実はインターネットは発信者を特定しやすいメディアなんですが、闇サイトを利用している人間は〝インターネットの匿名性〟という幻想を信じており、バレないと思っているのでしょう。犯罪仲間を誘う行為も、面と向かって誘われたら間違いなく自制心が働くと思うのですが、ウェブ上だと現実的な考えができないので安易に誘いに乗ってしまう。もし闇サイトがなければ、(前述の)名古屋で女性を殺害した被告たちも、凶悪な犯罪を犯すことはなかったかもしれません」
闇サイトをめぐる法的規制の現状
一方、こうした事態を引き起こしている闇サイトへの法的規制は、どのようになっているのだろうか? ネット犯罪に詳しい、弁護士の紀藤正樹氏に聞いた。
「現状の法律では、闇サイトを規制するのは難しいというのが事実です。幇助犯としてサイトの管理人を摘発するということはあり得ますが、警察もそこは自重しています。サイトが犯罪のきっかけになったからといって、そこに幇助罪を適用するのであれば、現実の世界ではいくらでも適用できてしまうわけですから、やはり〝最後の手段〟として慎重であるべきです。極端な話をすると、クラブでドラッグが蔓延しているからといって、すべてのクラブを摘発するわけにはいかないですよね。インターネットの規制は、自由との調和を目指しながら議論していくことが必要なんです」
では、具体的な解決策は、あるのだろうか? 紀藤氏は、2002年の古物営業法の改正と03年に施行された出会い系サイト規制法によって、違法なネットオークションと出会い系の“闇サイト”が減ったことを踏まえて、職業安定法(以下、職安法)の改正による犯罪を誘発する闇サイトへの規制を提案する。
(橋富政彦・文/後編へ続く)
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