総会屋を知らずして、経済を語るなかれ
【推薦人】 政田幸一
この本は、こんな書き出しから始まっている。
「ザ・ソーカイヤ」の存在について、外国人投資家や外国人ジャーナリストたちは不思議がっていた。第二次世界大戦末期の日本軍の神風特攻隊を「カミカゼ」と呼び、理解しがたい不気味な存在として恐れたように、彼らにとってGDP(国内総生産)世界第二位の日本において、総会屋がわが者顔に企業の生き血を吸いつづけていることが理解しがたかったのである──。
総会屋が戦前・戦後の政界・財界に深くかかわり、また大きな影響力を持っていたことや、権力の一方である警察もそこに利権を持っていたことなど、テレビ・新聞ではとてもわからないことが、この『経済マフィア 昭和闇の支配者』には本当によく書かれている。総会屋の歴史や実態を、大下さんの旺盛な取材活動と調査により、大変リアルに描かれ、読んでいくうちに「そうだったのか」と思わず引き込まれることが請け合いだ。銀行、証券会社、芸能界、ヤクザなどの裏人脈まで、時代を読んだその幅広い創作活動には、本当に感心させられる。あらゆる階層の人たちとの面談による取材力は、大下さんの右に出る者がいないであろう。
この本は、まさに闇情報と裏世界で生きた総会屋を見事に著している。そして華やかな舞台ばかりでなく、あらゆる世界に通じた駆け引きや、企業という生き物をめぐる総会屋、警察、そして弁護士を含めた利権の攻防、企業の自衛本能などいろいろと問題提起もしている。単に娯楽本として読んでも面白いし、知らないうちに企業と政財界のことも、ヤクザ世界のことも、また芸能界のことも勉強できるという本でもあります。最近の経済関連本では、この本以上におもしろいものはありません。
政田幸一(まさだ・こういち)
論談同友会主宰の「Web論談」編集責任者。政界、経済界や社会の不正についての内部告発を受け付け、ウェブサイトで公開している。
『経済マフィア 昭和闇の支配者 5巻』
大企業の株主総会に食い込み、スキャンダルを武器として合法的に企業から金を巻き上げる人々を「総会屋」と呼ぶ。本書では武闘派「広島グループ」を率いた小川薫、第一勧銀や四大証券を主戦場とした小池隆一、「論談同友会」を組織した正木龍樹といった大物総会屋が支配する、闇経済の実態を徹底取材した単行本を文庫化。(大下英治/だいわ文庫/800円/1680円)
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