マルサも動いた! “財界トップ”キヤノンの黒い疑惑(後編)
#事件 #企業
キヤノンが県を“恐喝”した証拠の文書が出てきた
ところでこの大賀社長、実はただ者ではない。同氏が設立した大光の出資者のなかには、02年に茨城県石岡市の競争入札を妨害した容疑で特捜部に逮捕されたことがある元代議士秘書がいる。別の経営会社には地元有力代議士、衛藤征士郎氏の元秘書が入っていた。「この秘書と大賀氏が組んで、大分県内の土木建設工事について、天の声を出していたという話も伝わっている」と地元紙記者。
さらに大賀社長は、民主党本部が入っている国会そばのビルの9階に、オフィスを構えている。そこに「日本シークレットサービス」なる会社が併設されているが、これが実に興味深い。企業の総会屋対策などを請け負う会社で、社長は元大分県警本部長。そのほか、大物検察OBらも名前を連ねているのだ。「つまり、大企業キヤノンのお膝元で起きているさまざまな疑惑は、大賀の人脈によって未然に発覚を防ごうとしていたわけです。それだけに国税当局は、異例の総がかり体制で臨んでいるわけで、さらに検察OBと立ち向かうために、特捜部を引き込む必要があったわけです」(国税部記者)
こうした人脈の恩恵に浴してばかりいて気を許したのか、キヤノンと鹿島は県サイドと一緒に問題行為に手を染めている。キヤノンの工場予定地になっていた、大分県土地公社発注の用地造成を、鹿島は68億円で請け負ったのに、造成後の土地は50億円でキヤノンに売却されていた。差額18億円は、
県の補助金で穴埋めしていたのだ。
「県側は『この穴埋めは県議会の承認も受けているから問題ない』と突っぱねているが、どうも怪しい。事前の地質調査などで60億円くらいかかると試算しているし、後になって急にため池工事が必要になったとか、埋蔵文化財の調査費が発生したとか、県側がまさに鹿島の言い値通りにどんどん経費を膨らませたせいで68億円まで膨れ上がったからです」(地元記者)
さらに、とんでもないスキャンダルが持ち上がる。造成工事を発注した県土地公社理事長あてに、キヤノン常務が差し入れた念書の存在が発覚したのだ。
キヤノンはその中で、「弊社の意図する用地に造成できるかどうか、重大な関心をもっている」とすごんだ上で、「鹿島建設株式会社は、技術力や安全性、価格競争力において群を抜き、限られた期間内で十分満足する成果を上げており、多大な信頼をおいている」と鹿島を持ち上げている。その上で「是非とも今回の造成工事については、鹿島建設株式会社を選定していただきたく、誠に勝手なお願いではございますが、何卒特段の御配慮、御英断を賜りますようよろしくお願い申し上げます」と申し入れていた。これは言外に、鹿島が造成工事を受注できないならキヤノンは工場進出しないと言い切っているわけで、脅迫文に近い代物ではないだろうか。
発覚した念書スキャンダルについて、司法記者はこう解説する。
「公正な入札を妨害し随意契約を結ばせたことは、少なくとも競売入札妨害罪に当たります。しかも、県の補助金を使って土地取引の差額を穴埋めした点は、正当な理由がなければ不当に県民の税金を支出したことになるので、県の責任者は背任罪に問われかねない。その最高責任者である広瀬勝貞知事は元通産事務次官で、御手洗氏とは旧知の仲。有力後援者でもある御手洗氏サイドやキヤノン、あるいは鹿島から広瀬陣営にどのような献金が行われているかが捜査のポイントになっています。不明瞭な献金でも見つかれば、汚職事件にならないとも限らない」
こうなってくると、御手洗会長の周辺がピリピリしてくるのもうなずけるだろう。横浜市内の私邸入り口には、神奈川県警のポリボックスがドンと設営され、週刊誌など、新聞・テレビの経済部記者以外の記者が近寄ろうものなら、たちまち追い返されてしまう。
ならば、新聞・テレビといった大手メディアに張り切ってもらいたいところだが、「キヤノンからの莫大な広告費のせいで、民放などはなかなか報道できない」と、経済部記者は事情を打ち明ける。
「キヤノンの偽装請負を暴き、御手洗氏に厳しく臨んできた朝日新聞ですら、ほとんど脱税事件を報じない。というのは、偽装請負報道を機に一昨年秋からキヤノンは朝日への企業イメージ広告の出稿を取りやめ、朝日は何千万円もの減収になったからなんだ。ところが、今年1月から広告取りやめが解除されたようで、そのため報道を自粛するよう、暗に現場へ圧力がかっているんじゃないか」
大手メディアがこのような体たらくとは情けない限り。ここはひとつ、強力布陣で臨む捜査当局に徹底した捜査を望みたい。
(編集部/「サイゾー」3月号より)
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