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「名越稔洋×佐藤江梨子」異色クリエイティブ対談

20080311_taidan.jpg右が名越稔洋氏。大ファンの佐藤江梨子(左)の前に、ちょっと緊張気味!?

 極道同士の抗争を描いた名作ゲーム『龍が如く』(2005年に発売)。リアルに再現された現代日本の繁華街のCGや、〝大人の漢〟を描いた濃厚なドラマ性など、その斬新さが話題となった。その後続編、映画版などと続いた同シリーズを一貫してプロデュースし、トップクリエイターとしても名高い”ゲーム界の風雲児”名越稔洋氏が、同シリーズ最新作『龍が如く 見参!』を引っさげて、「サイゾー」に初登場。同氏が以前から、タレントとしてのみならずクリエイターとしても注目していたという、今月号のカバーガール・佐藤江梨子さんを対談相手に迎え、「ものを生み出すということ」について語ってもらった。


──名越さんは、以前からサトエリさんに注目していたとのことですが。

名越稔洋(以下、) 注目していたというか……大ファンです。今、めちゃめちゃ緊張してます。今まで数え切れないくらいインタビューを受けてきたけど、こんなに緊張したことってないですよ(笑)。

佐藤江梨子(以下、) いやぁ、うれしいですね。面と向かって「ファンです」って言われることなんて、普段あまりないから。

──名越さんはゲームクリエイターとして、佐藤さんはタレント、女優として、多くの作品を世の中に発信しています。お2人の「もの作り」の原動力になっているものって、なんですか?

 20年くらいゲームを作り続けてきたけれど、やればやるほど、ゲーム業界に対する不満というか、疑問のようなものがずっと消えなくて。ゲームって、急成長したメディアである分、技術の進歩に理論が立ち遅れている部分があるんです。例えば、倫理観の問題。ゲームの内容を審査する自主団体があるんだけど、審査する上での価値観がちゃんと確立されていないから、あいまいな部分を多く感じます。キスシーンはOKだけど、舌を入れたらNGとか(笑)、人を殺すシーンでも、舞台が現代じゃなければOKとか、相手が人間じゃなくてゾンビならOKとか。

 舌を入れる表現がダメなんですか!? 確かに、マリオとピーチ姫がディープキスしてたら、ショックだけど(笑)。

 確かに(笑)。つまり、どういった対象に対して、どういう意図を持って作られたゲームであるか、ということがきちんと確立されていれば、表現にはもっと自由があっていいと思うんです。佐藤さんは、ゲームというメディアの魅力ってなんだと思いますか?

 映画や小説はこちらが受け止めることしかできないけど、ゲームだと、自分が主導権を持って登場人物を動かすことができますよね。感情移入しやすいというか。

 そう。ゲームって、文字も絵も動画も表示できるし、自分で入力もできる。表現の幅が広いんですよね。だから、いろんなことを伝えるメディアとしては、すごく優れている。その分、責任も重いですよね。無責任なことをやりすぎると、多くのユーザーを「人って簡単に殺せる」みたいな結論に導くことだってできちゃうわけで。だから、それを自覚した上で、ゲームにしかできない可能性みたいなものを、クリエイターが責任感を持ってコントロールすることが大事かなって思うんです。そういう議論って、ゲーム業界の中でも行われていない。そんな曖昧さとか、「もっといろんなことやりたいよなぁ」って言いながら誰もやろうとしない風潮とか、ヒット作の続編ばかりが作られるような業界への不満とか、いろいろあったわけです。それで、一度思い切ったことをしようと思ってできたのが、『龍が如く』シリーズだった。

 なるほど。私の場合は、世の中に対して表現したいことはあるけど、それをドラマや映画の中に織り交ぜながら反映していくことが多いし、そういう作品が好き。去年公開された映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で私が演じた主人公は、傲慢でとんでもないんだけど、「この人、これからどうなっちゃうんだろう?」と考えてもらったり、観た後に自分の現状を考え直してもらえるような作品になったと思います。ゲームほどではないと思うけど、観客のとらえ方ひとつで、現実に対して何かを考えてもらえるような部分が入っている作品を、意識して選んでいますね。

 あと、ゲーム業界と同時に、今の男の頼りなさに対しても、ちょっと言いたいことがあって。「男ってこういうものだ」って、ピシッと言っているようなメディアがあまりないように感じたので、ゲームからそういうものを発することができたら面白いなと思って。世の男たちに対して、「逃げないで生きようよ」ということを伝えたかった。佐藤さんは、今の男性に対してどう思いますか?

 私の周りには、自己主張が強すぎる男が多いからなぁ……。

 最新作『龍が如く 見参!』では、前作までと違って、舞台を江戸時代に移しているんだけど、ゲームを終えたときに、自分が日本人であることに誇りが持てるような内容にしたいと思って作ったんです。他人のために自分を後回しにできる、そういう自己犠牲的な「強さ」って、今あんまりないでしょ? そういう人に自分がなりたいという気持ちがあるし、そういう「日本人の美学」のようなものがあってもいいじゃないって。「偽」みたいな文字が日本を表す言葉として選ばれ、国民も「ぴったりだよね」と思ってしまう。そんな風潮に我慢ならないというか。俺が古いのかもしれないですけどね。

「満足感」の上に、数字をそれがプロデューサーの役割

 でも、思いを込めれば込めるほど、反響が気になりませんか?

 もちろん。制作中も不安だし、発売後も不安。面白い仕事をさせてもらっている分、結果を出さなきゃというプレッシャーもある。佐藤さんは、作品に対する反響は怖い?

 もちろん怖いです。でも、作る側にかかわってしまっているから、作品に対する「評価」を自分がしてしまうことには、抵抗がありますね。誰でも無意識に、「このドラマ面白いな、面白くないな」って判定してしまうことはあるじゃないですか。でも、このお仕事をしているから、どんな作品でも、作っている側が一生懸命なのはよーくわかっている。だから、「面白くない」とは口に出せませんね。

 それはあるかも。でも、「いい作品だけど売れなかったもの」って、やっぱり必要ないものなんだって思っちゃう人間なんですよ、僕は。

 うわぁ。バッサリ!(笑)

 「無冠の帝王」って、意味のないことをした人のことなんだと思う。いくら実力があっても、それを出す場面やタイミング、表現の方法を間違ってるということ。評価されないものを作って、「俺、スゲーぜ!」って叫んでも、意味がないですよ。

 うんうん、確かに。

 エンターテインメントってものが「世間の評価」を基準にしている以上、それを信じるしかない。疑いだすと、「俺はいいと思う」という自己満足の世界に入っちゃう。世間の評価以外の部分で感じることができる「プロデューサー業の醍醐味」って、かかわってくれたすべての人が、「この人とやってよかった」と思ってくれることなんですよ。だからといって、スタッフに好かれたくて妥協するんじゃダメ。結果的に数字を取れるものを作ることで、スタッフを守っていくしかないんです。つらいですよ。「俺だって、本当はこっちのほうがいいと思ってるよ、バカヤロー!」って叫びたくなることもあります(笑)。でも、プロデューサーがそれを言ったら終わりですからね。

 プロデューサーとしては、売れるって自信があるものじゃないと出せないですもんね。
(この続きは、明日発売の「サイゾー」4月号で!)

佐藤江梨子
1981年、東京都生まれ。テレビドラマ・CM・舞台・執筆活動と、幅広いジャンルで活躍。主演映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)は、第60回カンヌ国際映画祭批評家週間出品作品として注目を集め、第29回ヨコハマ映画祭では主演女優賞を受賞。

名越稔洋
1965年、山口県生まれ。東京造形大学映画学科卒業後、89年、株式会社セガに入社。『デイトナUSA』『スーパーモンキーボール』『龍が如く』など、多彩なジャンルのゲームをプロデュース。そのワイルドな風貌と発言でも注目を集める、ゲーム界の風雲児。現在、同社のR&Dクリエイティブオフィサーにして、CS開発統括部副統括部長、兼NEソフト研究開発部部長。

「龍が如く 見参!」
東京、大阪の繁華街を舞台に極道同士の抗争を描き、総計170万本のセールスを記録した『龍が如く』シリーズの最新作。今作では舞台を江戸時代の京都に移し、〝日本人の魂〟を描いている。声優・3DCGキャラクターとして、松田翔太・寺島進・加藤雅也・塚本高史・竹中直人・松方弘樹など豪華俳優陣も参加。絶賛発売中。対応機器/プレイステーション3 価格/7980円(税込) 発売/セガ 公式HP

最終更新:2010/12/07 19:57
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