トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > 他社に厳しく自社には超アマ!二枚舌・朝日新聞の偽装委託(中編)

他社に厳しく自社には超アマ!二枚舌・朝日新聞の偽装委託(中編)

朝日新聞関係者は真正面から答えず

 たとえば原告のひとり、松元千枝氏の場合、1日の拘束8時間、実働7時間の日給月給制(月平均は40万円ほど)、土日祝日休み、社会保険なし、有給休暇なし、契約期間に関する説明もなく、契約書もない状態で働いていた。最初は翻訳などをしていたが、次第に取材・執筆を任され、記者として働くようになり、後に有給休暇が付与されるようになった。ほかの2人、小寺敦氏と横村幸美氏の場合も、松元氏と報酬の形態に違いはあるものの、同じく社会保険や有給休暇のない状態で働いていた。3人いずれもフルタイムで、朝日新聞の仕事に従事していた。

 小寺氏は、以前、「デイリー・ヨミウリ」での勤務経験があり、そこも当初は残業代の未払いなど労働条件に問題がある職場だったものの、労組として交渉すると即座に改善されたが、「朝日に入ってみると、組合つぶしもあり、その違いがすごかった」(小寺氏)という。

 現在の労働法制で、雇用者としての労働者性を認められるには、会社側からの業務の指示に諾否(許諾)の自由はあったか、時間的・場所的拘束性はあったかなどが重要となる。ヘラルド朝日労組訴訟の場合、東京地裁、東京高裁ともに判決では、原告が入社試験を受けていない、業務選択に当たっては自由があったなどと判示し、彼らの労働者性を否定している。

 一方、原告らは高裁で、朝日新聞との力関係において基本的な支配・従属関係があったと主張した。この主張に正当性はないのだろうか?

 実は今回の裁判のような雇用労働者と自営業者の中間に位置する「経済的従属労働者」の問題は、最も今日的な課題として、欧米でも注目されている。すでに多くの国で働き手の従属性の実態を見て、労働者性を判断する方向にあり、フランスの労働法典では、ジャーナリストら特定の職種の経済的従属労働者に関する、雇用関係の推定規定まで法整備されているのだ。

 では、そうした状況に最も敏感であるべき朝日新聞は、今回の裁判や、自社内の非正規労働者問題をどのように考えているのか、関係者に聞いてみた。

 まず、朝日新聞・広報部は、係争中の裁判についてはコメントできないとしたため、関連する事柄として、派遣社員の活用状況なども質問したが、中身のある回答はなかった。朝日新聞労働組合は「一般論として、フルタイムで拘束されていた人の労働者性を認めないのは好ましくないと思いますが、この件については論評できる立場にありません」と判断を避けている。また、現役の朝日新聞社員で、偽装請負などの労働問題について社外の媒体や講演でも積極的に発言している労働チーム記者・竹信三恵子氏は、ヘラルド朝日労組訴訟をどう評価するかといった筆者の質問に「具体的な回答は控えます」として、対面取材すら拒否した。朝日新聞の正当性を訴える声は、ここでは聞かれなかったのだ。

 元朝日新聞編集委員の労働ジャーナリスト・中野隆宣氏は、「会社は、原告との関係を個人事業主との業務委託・請負関係だと主張しているようです。しかし、原告が言う『会社の指揮命令を受け、1日8時間勤務で日給月給制』という労働実態からいえば、事実上の雇用関係にほかならないでしょう。社会・労働保険への加入や解雇規制など労働法上の規制を免れ、使い勝手をよくするために、使用者が事実上の雇用関係を個人事業主との委託・請負関係とする『偽装委託』が増えています。判決を読んでいないのでわかりませんが、今回、裁判所がどういう論理で原告の〝雇用者としての労働者性〟を否定したのか疑問です」と、裁判の評価に踏み込んだ回答を寄せた。

 実は昨年8月、朝日新聞社内では、「偽装請負 社内に『灰色』」と題した組合報が張り出され、自社内に偽装請負状態の労働者が、11例あったことが告知されている。

 現在、朝日の社員数は、5750名(07年4月)。うち非正規状態の派遣・委託先社員数は1622人(07年3月)、さらに顧問、非常勤嘱託、アルバイトなど非正規状態の者が約400人(年間平均)。つまり、朝日社内では3人に1人が非正規労働者として働いている。

【関連記事】 スマイルもひきつる? マクドナルドの冷酷な経営姿勢
【関連記事】 こんな戦車、必要なの? “無駄”で潤う三菱重工

最終更新:2008/06/17 19:56
ページ上部へ戻る

配給映画