米国紙記者も呆れた! テレ朝大統領選挙“報道”の軽佻浮薄ぶり
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クリントンvsオバマの熾烈な争いが繰り広げられた「スーパーチューズデー」。この2月5日の模様をはじめ、予備選挙が始まった1月上旬から、「同盟国」日本のメディアも興奮気味に米国大統領選を伝えてきた。それはもう世界情勢を左右するニュースを伝えようというよりも、ハリウッドでのドタバタを伝えるワイドショーのようだった。
そもそもテレビ局は、レポーターからして、普段はグルメか温泉を取材しているような人材を選んで、米国まで派遣しているのだから、違和感を覚えざるをえない。そのレポーターとは、テレビ朝日の富川悠太アナウンサーだ。彼は、1月上旬に予備選を取材するために北東部ニューハンプシャー州に飛んだ。いや、取材というより、ヒラリー・クリントン候補を野次馬的に見に行ったというほうが正確かもしれない。
富川氏は、これまで『スーパーJチャンネル』などで、「町中を歩き回る地蔵」「カリスマ猫」「チアボーイズ」「龍宮城温泉」などを「取材」したときと同じような軽いノリで、大統領選挙戦を報道しようというのだから、その勇気には驚かされる。
1月9日の『報道ステーション』では、クリントンを追う富川氏の姿があった。クリントンを見るなり興奮した富川氏は、支持者たちの後ろから右手を目いっぱい差し伸ばし、彼女と握手。8分間を費やした番組内の大統領選のレポートの中で最も強調された部分だ。
はたして、これが日本を代表するニュース番組の報道なのだろうか? アメリカメディアでの取材歴が長い筆者から見ると、まるでメジャーリーグ観戦で興奮している子どもである。
テレビ朝日広報部は「とくだん強調しているわけではありません」と筆者の質問に回答してきたが、その「握手シーン」を何度も繰り返す様子はニュースを超えている。「(富川氏は)テレビ局が好む、いわゆる『ノリがいい』タイプなんじゃない?」と大手メディアの政治記者は言う。
さらに富川氏は、「(1月上旬の段階で)今回の大統領選は、上位に誰が出てきてもおかしくない」と、他国のメディアではまったくありない大胆な分析をしてみせた。その割には、その時点で少なくとも12人いたクリントン以外の大統領候補に関してほとんどふれていない。「誰が出てきても」といったが、12人もいることは知らなかったのだろう。しかも、共和党候補の紹介に費やした時間は9秒。選挙報道にしては、あまりにバランスに欠けている。
そのことを指摘すると、テレビ朝日は「ニュースの扱いは、そのときどきに適宜に判断いたします」と回答。だとしたら、記者や番組側の判断力が貧弱だということだろう。日本からわざわざ女性の大統領候補だけに握手をしにいき、そのうえ興奮していたとなると、日本の男イコール「スケベ」というイメージが、米国で再強化されるのは必至だ。
(神林毅彦/米国紙記者)
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