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こんな戦車、必要なの? “無駄”で潤う三菱重工

 一連の防衛省スキャンダルで、防衛装備の調達コストの高さが問題となった。ただし、高いのは商社が介入する輸入品ばかりではない。国産品も、これまたバカ高いのだ。この血税の無駄遣いの恩恵にあずかっているのが、国産兵器製造の最大手・三菱重工(以下、重工)だ。同社の防衛部門の売上高は、約2800億円で軍需企業の世界ランキング25位。ところが、その重工も安穏とはしていられない。MD(ミサイル防衛)に防衛予算を奪われ、防衛省のミサイルや戦闘車両の調達量は、平成元年に比べ、18年度は共に3割程度に、火砲に至っては2割にまで落ち込んでいるのだ。


 そこで重工が取った手段が、軍事的あるいは経済的な合理性のない兵器を、蜜月関係にある自衛隊と共謀して開発生産するというもの。もちろん、その不合理のツケは、国民が払わされるのだ。

 たとえば、防衛省が本年度予算として要求し、財務省に削られるもしつこく来年度予算で要求した装輪戦車。本来これは、コマツが開発中の「将来装輪装甲車」の派生型を導入するはずだった。ところが実際には、同様の機能を有する「8×8装甲車」の車体を重工が開発することになっている。この意味のない二重投資は、重工への補助金以外の何物でもない。

 また、重工が開発中のTK-Xと呼ばれる新型戦車も無駄の典型。諸外国は、おおむね2030年ぐらいまでは既存の第三世代の戦車をネットワーク化するなどの改良を加えている。TK-Xは、この3・5世代ともいえる改良型戦車と性能的には大差がないのだ。これなら、既存の90式戦車を改良するだけで十分。しかも、90式の車両重量は50トン。TK-Xは、90式では重すぎてできなかった本土への配備を前提に40トンへの軽量化を目指すと謳っていたが、試作品の重量は44トン。さらに増加して、90式とほぼ同じになる可能性もある。そもそも90式は「外国製の戦車は重たすぎるから、国情に合った戦車の開発が必要」として、自衛隊と重工が中心になって開発されたのだが、結局は「重すぎて北海道以外に配備されていない。90式が重すぎるから、またも莫大な資金をかけて「内地に配備できる」TK-Xを開発、しかも既存の戦車はネットワーク化もせずに放置されるというのは納税者をバカにしている。

 さらに、今後は防衛費の伸びが期待できないためか、重工は小型旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の開発に乗り出した。40年ぶりに開発される国産旅客機と話題だが、同社の計画はずさんで、身の丈を超えている。このMRJ、事業化には約7000億円かかるといわれているが、これは重工の航空宇宙部門の利益の約半世紀分で、いかにも過大だ。開発費は当初1200億円、うち経済産業省が400億円負担するとしていたが、これがいつの間にか1500億円に膨れ上がり、経産省の負担も500億円に拡大した。いうまでもなくこれも税金だ。

 重工は、昨年パリ航空ショー期間中、日本大使公邸を借り切ってMRJのお披露目パーティをしたのだが、その大半は日本人の業界関係者。メディア関係者も招待されなかった。世界に向けてMRJをプロモーションできる一大チャンスに、身内同士で飲み食いしている。とても、積極的に海外に売っていこうという気があるとは思えない。これでは、はなから事業化など考えておらず、国からカネを引き出し、試作品の製作で仕事量だけを確保しようとしているのではと勘繰られても仕方あるまい。

 「国家と共に歩む」が、三菱グループ創設時からのキャッチフレーズである。それは国家に寄生し、国益を損ねてまで税金をかすめ取るような商売をすることを意味してはいないはずだ。一方で、なぜ国家はここまで重工を庇護しているのか? いち官僚と商社の癒着を問題にするだけでなく、こうした不合理な構造にこそメスは入れられるべきではないだろうか。(清谷信一)

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最終更新:2008/06/17 19:58
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