サブプライム問題が、08年の市場に与える影響は?
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ゴールドマン・サックス/ニューヨークタイムス
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【NY発!ウォールストリート・アナリストの目】
自他共に認める、世界経済の中心国アメリカ。その中でも、ニューヨークマンハッタン島に位置する「ウォールストリート」は、全世界のマーケット情報や人材が集まる金融の中心だ。そんな地において、第一線で活躍するアナリストたちが、日本からは見えにくいアメリカの実像、そしてアメリカから見た世界の微動・激動をレポートする。
■今月のアナリスト:ブラドリー・ルービン (Bradley Rubin)
こんにちは。BNPパリパ・ニューヨークのブラドリー・ルービンです。
今回は、サブプライムローン(信用力の弱い借り手向けの住宅融資)問題で、アメリカ国内の景気が悪くなるのではと心配されている中、アメリカの投資家は、08年、どのような投資行動を取るのかをお話したいと思います。
まず、アメリカは今、住宅市場が在庫・供給過多状態です。簡単にいえば、サブプライムローンの返済能力がない人たちが担保にしていた家を手放したため、その家が市場に溢れ出しているわけです。そのため、住宅建築業者や住宅融資に関連している会社の業績が、今後さらに悪化していくことは目に見えています。こうした企業への投資は、引き続き避けられるでしょう。
また、当然のことながら、サブプライムローン問題で直接的に巨額な損失を被った、多くの銀行や証券会社などの金融機関に対しても、投資家は慎重な態度を取っています。投資家たちは一般的に報道されている以上に、各金融機関の損失の大きさや業績の悪化状況などを細かく調べており、その結果、当面は投資しないことが最も安全という結論に達しています。
では、逆に投資対象になる分野はどこでしょうか。私は、技術関連やIT関連で、負債の少ない会社だと思います。景気減速の懸念が高まるアメリカでも、そういった分野の中には、好調な業績を維持している会社は少なくありません。逆風の中で、それはまさに、真の強さをもった企業といえるでしょう。
GE(ゼネラルエレクトリック)やトヨタ自動車、アップルのような製造業の好調さも、続くはずです。
さらに私が注目しているのは、鉱業、金属業界。この業界は全般的に業績が向上すると思われますし、特に、金や銀などの資源を扱っている企業が好調になると思われます。その理由は、以下のものです。
アメリカの景気が弱含みであるため、米連邦準備理事会(FRB)は利下げをするでしょう。よってドル安となります。これにより、金や銀,鋼板などの金属価格が上がります。また、車の販売車数が下がるので、鋼鉄会社はそれを見込んで在庫を減らしています。この動きが、さらに鋼板の値段を上げると思われます。
投資は日本に流れるのか?
さて、日本のみなさんが気になるのは、そんなサブプライムローン問題の影響下にあるアメリカの投資家が、日本を含む、グローバル市場への投資において、どのような態度を取るのか?ということではないでしょうか。
結論から言ってしまえば、国内市場を避けた投資家の資金が、顕著といえるほどグローバル市場へと流れていくかといえば、そうはならないでしょう。
まず、前提として、アメリカ人投資家は海外投資に非常に消極的という状況があります。現在、海外投資のベースとなっているのが、401K(確定拠出型年金)などですが、そこでも大多数のアメリカ人の投資の対象は国内市場に限られています。その要因は単純で、海外市場に関する彼らの知識が不足しているから。そもそも興味がないので、知識を蓄えようというモチベーションも低いんです。
加えて、ほとんどの個人投資家は、海外投資の方法すら知らないというのが実情です。証券会社も、投資家を積極的に海外投資に引き込もうとはしていません。大手証券会社の多くが、グローバル市場への投資の窓口を用意していないことからも、それがわかります。富裕層を対象にした比較的小規模な証券会社が、海外投資を専門的に扱っているような状況です。日本市場、上海市場などへの投資も、そうした会社を通して、少数派がやっているに過ぎなく、今年もその状況は大きく変わらないというのが、ウォールストリートでの実感です。
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