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メーカーだけが悪いのか!? 食品偽装の“真犯人”を探せ(後編)

20080108_gisou.jpgパックサラダ、カット野菜は消毒液漬け!

賞味期限と消費期限 混同するメディアも!?

 騒動の裏側には、消費期限、賞味期限表示に対する一般メディア、消費者の誤解もある。メディアからの期限表示についての問い合わせがあまりに多く、農水省は11月に、記者向けに勉強会を開いたほどだ。

 消費期限は、製造日を含めて約5日以内で品質が劣化する食品、たとえば弁当、惣菜、食肉などにつけられる。消費期限を超えると、腐敗や品質劣化に伴い、安全性を欠く恐れがある。

前編はこちら

 一方の賞味期限は、品質の劣化が比較的緩やかな食品、スナック菓子、即席めん類、缶詰などにつけられる。あくまでもメーカーによる「おいしく食べられる」という補償期限であり、賞味期限を超えた場合でも、一定期間の品質は保持されているとされる。

 これらの期限は、行政や業界団体の指導に従い、メーカー自身が品質と安全性を試験した上で設定している。そこにまた、改ざんの遠因がある。実は、メーカーは安全な日数よりもかなり短い日数を期限として設定しており、最近では、実際の0・5がけの日数を表示しているメーカーもあるという。

 もともと短く設定している期限表示。売れ残ったので、その分延長して期限を改ざんしてもいいじゃないか——。改ざんが行われる裏には、メーカーなりのそういった言い分があるようだ。

 では、なぜそれほど短く設定するのか。それは、消費者とのトラブルが怖いから。たとえば、消費者が冷蔵食品を冷蔵し忘れるなどして品質が劣化し、トラブルになるリスクを考え、最初から短く設定しておくのだ。

 また、少しでも短いほうが、「新鮮、安全」なイメージを与えることができる。あまり賞味期限が長いと「保存料が入っている」と避けられる。他社製品と差別化を図るため、メーカーは期限表示を短くしているのだという。

 企業が自ら決めた期限を守らず改ざんしたことはJAS法、食品衛生法違反だ。とはいえ、単にメーカーを叩けば済む問題ではないことがわかる。

『食品の裏側』(東洋経済新報社)で知られる食品ジャーナリストの安部司氏は、期限表示の偽装について「メーカーのモラルの崩壊」と断罪した上で、背景に「バイイング・パワー」の可能性も示した。

「小売業者が、メーカーや問屋に圧力をかけるんです。通常では考えられないような納入期限を設定したり、欠品の場合はその分の売り上げを補償させたり。それでメーカーは苦しくなり、返品された製品も『腐ってないなら偽装しろ』となってしまう」

 最近は独占禁止法による取り締まりが強化され、売れ残りの返品要求はかなり減っているが、依然として一部では返品要求が行われている可能性もある。さらに安部氏は、消費者にも責任の一端があると指摘する。

「消費者も短絡的で、鮮度志向が度を 越している。24時間いつでも安く買えて、保存料無添加で新鮮な製品が欲しい? そんなの無理ですよ。メーカー、小売りは儲けのことばかりで、消費者はわがまま。三者がバラバラな方向を向いているんです」

 一連の騒動を振り返れば、赤福でも健康被害は報告されていない。その程度といえば、その程度だ。もちろん被害が出てからでは遅い。しかし、必ずしも被害が予測される深刻な事態ばかりではないのが実情であり、それを知らずしてただ「あのメーカーは悪質だ」と一方的に責めるのは、健全な経済活動を妨げたり、食品の無駄な廃棄を増やすなど別の弊害を生み出す可能性があることを知っておくべきだ。
(安楽由紀子/「サイゾー」1月号より)

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最終更新:2008/01/16 20:55
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