スキャンダルくすぶる防衛産業【1】呆れた無駄遣いの実態
#政治 #事件 #スキャンダル #防衛省
10月29日、防衛省のCXエンジン納入に関わる接待疑惑で、守屋武昌・同省前事務次官の証人喚問が国会で行われた。今後は、山田洋行元専務に接待された守屋氏の違法性が問われることになるが、そのほかにも防衛省が抱えるスキャンダラスな構造に国民の厳しい目が向けられることになるだろう。特に、防衛省を中心にした日本の防衛産業の「無駄遣い」体質は、問題だらけだ。この「無駄」の部分が利権と化し、防衛省やそのOB、そして商社や兵器メーカーなどが群がっている。
では、その無駄遣いの実態とはどのようなものなのか? 「サイゾー」本誌では、今回の疑惑が大々的に報じるられる前に、専門家たちに集まってもらいこの問題を詳しく語ってもらっていた――。
[座談会出席者]
清谷信一(司会) 軍事ジャーナリスト/自衛隊装備調達ウォチャー
A…大手総合商社航空部門担当
B…中堅商社防衛部門担当
C…軍事専門誌記者
山田洋行の接待効果
清谷(以下、清) 「防衛費の使われ方」に関して国民の関心が低いのは、専門性が高いためか、メディアが取り上げることは少なく、問題提起する政治家(特に野党)もほとんどいないからでしょう。そこで今回は、「防衛の現場で動く金」をよく知る関係者に集まってもらい、5兆円にも上る防衛費と、その金が行き交う防衛産業のはらむ「不合理さ」「不条理さ」を検証してもらおうと思います。
まずはタイムリーなところで、航空自衛隊次期輸送機(CX)のエンジン納入をめぐる疑惑について聞かせてください。この疑惑は、軍需専門の老舗商社「山田洋行」が、数百億円にも上るCXエンジンの受注を得られた裏には、同社から防衛省幹部への過剰接待などの利益提供があったのではないかというもの。この受注工作をしていた山田洋行のM専務は、その後同社を退社し、日本ミライズという商社を設立。さらに、ミライズは、エンジン受注を山田洋行から奪ったものだから、東京地検特捜部は、M氏と防衛省幹部や防衛族議員との関係を洗っていると言われています。
A M氏は山田洋行在籍当時、年間億単位の接待費を使っていたと噂されていたくらいだから、相当なコンプライアンス違反はあったとは思う。陸上自衛隊の生物偵察車は、山田洋行の系列の「日本UIC」が受注を取ったけど、普通の軍隊ではNBC(核・生物・化学兵器)防護車を調達するのに、なんで陸自だけ化学防護車(核・化学用)と生物偵察車を併用する必要があるのか? 誰に聞いても説明できない(現在、両車の後継となるNBC偵察車を開発中)。数億円を無駄にするような納入が許されるなんて、いったい裏でどんな取り引きがあったのか。
清 山田洋行は接待攻勢が得意らしいですが、防衛産業では普通のことなんですか?
B いやいや。今や官僚を接待しても見返りなんかありません。M氏の場合は、小池百合子前防衛大臣とのバトルが話題になり、“防衛省の天皇”とも呼ばれた守屋武昌前事務次官が若い頃から、ゴルフだ料亭だと彼を接待漬けにしていたんでしょうね。そういう長年にわたる人間関係があったから、CX用エンジンの入札に、実績がまったくないミライズが参加できたんだと思います。昨日今日接待したからといって、それがすぐに実績になることはないですよ。
清 しかし、防衛費の無駄遣いや業界の過保護政策、防衛省OBの天下りなどの諸問題はありますよね。
C これまでは、蔓延してましたね。ただ、最近の防衛産業は、天下りを断るようになりましたね。いまや、メーカーとしても受け入れるだけの余裕もなければ、メリットもほとんどない。防衛省・自衛隊関係の天下りの受け入れ先として最も多いのは、実は損害保険会社なんですよ。契約者が事故を起こしたときの示談交渉人として採用されるケースが、とくに目立ちますね。また、保険会社にしても、25万人の自衛官へコミットできるOB外交員はありがたい。元部下を強制的に保険加入させる困ったOBもいるわけですし。(つづく)
(山﨑龍/構成)
⇒次回、”競争なき防衛産業”の実態!
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