朝日新聞よ、お前もか!不当雇用で泥沼係争中
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朝日新聞は、非正規従業員の不当な処遇について積極的に取り上げる“労働者の味方”だった。その朝日が非正規従業員と裁判になっている。
訴えたのは、英字新聞「ヘラルド朝日」で働いていたヘラルド労働組合員の3人。松元千枝同労組委員長は語る。
「組合を結成したのは02年。雇用に際し契約書などはなく、日給月給制で各種保険や労災保険もない不安定な形態に疑問を感じたのがきっかけです」
組合結成後、朝日はすぐに団交に応じたが、社内の雰囲気は一変した。陰湿な組合潰しが始まったのだ。
「社員が無視したり、正当な理由がないのに怒鳴ったり、個別に呼び出して組合をやめるよう説得し、やめた人にはクッキーなどのプレゼントがあったり……。圧力によって組合や会社をやめる人が1人2人と出て、当初18人いた組合員は最終的に6人になってしまいました」(松元委員長)
交渉は進展をみせないまま、朝日は2種類の契約を提示した。ひとつは基本給プラス記事本数に応じて給与を上乗せするが、保険はなく諸経費は自腹。ひとつは保険は付与するが、1年契約で更新は4回まで。
「なぜ4回なのか説明を求めても回答がなく、条件を飲めなかった組合員は契約打ち切りの名目でクビです。05年7月、私たちは雇用契約上の労働者としての地位にあったことの確認を求める裁判を起こしました」(松元委員長)
法律的に雇用契約上「労働者」として認められるには、①仕事を選択する自由(諾否の自由)がなく会社の指揮命令下にある ②場所・時間の拘束がある ③報酬が記事の本数など仕事の対価ではなく、時間など労働の対価である、などが条件となる。今年3月、東京地裁は「労働契約的関係であることを認めることはできない」と組合側の請求を棄却した。
「仕事をする際、上司は『これやってみない?』と聞いてくる。それが私たちに諾否の自由を与えていたと言う。でも、現実には拒否できるような雰囲気はありませんでした」(松元委員長)
判決を不服として組合側は控訴中だ。この裁判について日本労働弁護団会長・宮里邦雄弁護士は次のように語る。
「形式上は〝業務委託〟となっていても、“労働者”としての実態があれば労働者として認められます。原告の場合、『諾否の自由』があったと地裁は判断していますが、それはごく例外的な場合のようです。その一部だけをとらえて『自由がある』と判断するのは問題がある。報酬についても名目を『原稿料』としてますが、勤務日数に基づいて支払われており、労働の対価とみる方が妥当でしょう。最近は一般的な雇用形態だけでなく、在宅ワーク、テレワークなど多様化している働き方の実態をふまえ、時代の流れに即した判断が望ましいですね」
関係者によると、朝日新聞社内の一部ではいまだに契約書を提示されることなく内勤状態で勤務し、正社員の指揮命令下で仕事をしている従業員が少なくないという。
また、朝日は「朝日新聞総合サービス」という100%子会社を設立し、そこから派遣という形で人員を確保、正社員と同じように常勤させている。総務や経理のバックオフィス業務などは、派遣社員に丸投げしているという話もある。派遣ならば賃金も安く雇用期間の融通もきく。もちろん、派遣法にのっとっていれば法的には問題ないが、労働者の味方として格差問題解決を訴えてきた朝日としては、お粗末な話だ。高給取りの正規社員と非正規社員の格差は広がるばかり……。
「現在の法解釈だけでは十分な対応ができない点もあり、将来的には法改正をして、労働者概念を再定義し、労働者保護を図ることが必要です」(宮里弁護士)
本件に関し、朝日新聞社側は「訴訟係属中のため回答は差し控えます」としている。松元委員長は条件が改善されれば「また朝日に戻りたい」と言う。
「経営者はもっと正社員を増やし、きちんとした教育の仕組みを整えてもらいたい」 ーー製造業の現場で若者の非正規雇用が増えたことに触れ、こう述べる朝日(06年8月25日付社説)。自らお手本を示すべきだ。(安楽由紀子/「サイゾー」8月号より)
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