声優業界の“パワハラ”事情(前編)
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水樹奈々や平野綾など、オリコントップ10 常連のアイドル声優も多く、声優人気はいまだ高い。しかし、業界大手アーツビジョン社長の淫行事件をきっかけに、ファンの間で声優業界に対する不信感が強まっている。謎多き、この業界の実態とは?(前編)
声優業界に激震が走る──。今年5月28日、大手声優事務所アーツビジョンおよびアイムエンタープライズの代表取締役を兼任する松田咲實氏が、声優志願の16歳の少女に採用をちらつかせてわいせつな行為をしたとして逮捕、書類送検された。松田氏は、声優のマネージメントを行う事業者が組織する日本芸能マネージメント事業者協会の副理事(当時)でもあり、いわば業界の〝ドン〟的存在。それゆえ、「アニメ声優業界ではパワハラが当たり前」
「人気女性声優は、枕営業で役を手に入れている」などの噂話がネット上で過熱し、ファンはいっそうの不信感を募らせている。こうしたたぐいの噂はかねてから囁かれており、「今回の事件は氷山の一角で、業界内には耳の痛い人物がほかにもいるはず」(アニメ業界関係者A氏)との声もあるが、一般にはその実情は不透明で、なかなか見えにくい。
「声優業界自体はとても狭いので、まず外に情報が漏れてくることはないし、アニメ・声優雑誌も、広告出稿やアニメの図版貸し出しを中止されてしまうと困るので、作品や声優に対してのネガティブな記事は掲載したがりません。そのため、こうした噂の真偽を伝える公の場がないというのが現状。2ちゃんねるなどで飛び交うファンの憶測や妄想が、業界のマイナスイメージを増幅させているのです」(声優雑誌ライター)
しかし、まったくの噂かといえば、そうでもないようだ。この事件を受けて、ベテラン声優の大塚明夫と黒田崇矢が自身のネットラジオ番組「Knock Out VOICE!!」で、枕営業の事実をほのめかす発言をしたのである。やはり、声優業界がパワハラ体質であるという疑いは拭えない。声優業界とは、いったいどんな世界なのだろうか?
性欲と野心が渦巻く弱肉強食の世界!?
驚くべきことに、今回取材した業界関係者のほとんどが、業界の枕営業・セクハラの存在を肯定した。前出のA氏が、こう話す。
「噂ではなく、ズバリあると思います。実際見たわけではありませんが、以前、あるアニメ関連企業の上層部の方に『この業界には、今でもそういう(枕営業のような)古臭い習慣が残っているんだよ』と聞いたことがあります」
また、アニメ業界関係者B氏も、こう断言する。
「パワハラが横行する業界ですよ。事務所が女性声優に枕営業を強要したり、キャスティングについて発言力のある制作陣(プロデューサー、音響監督など)、代理店・スポンサーサイド、大物声優などが、作品での起用をほのめかしてセクハラする場合もあります。声優養成所の講師もやっている大物声優Iは、食いまくりで有名。実際、私が知る限りでも声優やら女優やらと、4回は結婚・離婚を繰り返しています」
声優仕事のイロハを教える養成所では、現役のベテラン声優や俳優、演出家などが講師として迎えられることが多く、そこでも、生徒に対するセクハラ行為が行われているという。
「人気アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の主要キャストのひとりから、養成所時代にセクハラを受けたと聞いたことがあります。彼女が『そういうことは、普通にある』と言っていたのが印象的でしたね」(声優業界関係者)
声優を育てる現場で、そのような不埒な行為が本当に行われているのであれば、由々しき問題だ。しかし逆に、「一部の女性声優自身が、自発的に行っているケースも少なくない」と、ある映画プロデューサーは語る。
「全員がそうだとは言いませんが、女性声優の中には、野心丸出しで、節操のない人もいますね。僕もモーションをかけられた経験があり、以前、飲み屋でホステスをしていた新人声優にすり寄られて、一度だけ映画に脇役で出してあげたことがあるんです。とりあえず、声優仕事でなくても名前を売りたいという感じだったので。そしたら公開初日、舞台挨拶時の控え室で、突然彼女が僕の膝の上に乗ってきて、今度は『まだ主役はもらってない~』と、アニメ声ですり寄ってきて(苦笑)」
にわかには信じ難い話だが、声優自身がこのように身を呈してまで仕事を取ろうとするのには、こんな事情があるという。
「芸能界と同様、声優業界も、特にアイドル声優を抱える事務所なんかはイメージ戦略をしっかりやっていますが、それは売れてきた段階での話。基本的に事務所は新人の面倒を見ないんですよ。芸能事務所であれば、新人を売り込むために必死で営業活動をしますが、声優事務所はそこが弱い。一生懸命なあまり、『いい仕事を取るためには、寝るのがいちばん手っ取り早い』と考える声優がいてもおかしくはないでしょう。ただし、時には決定権のないアシスタントプロデューサーなどに騙されて寝てしまうこともありますから、かわいそうですよ」(前出・B氏)
つづく(小石川光希/「サイゾー」8月号より)
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