日本の刑務所はパンク寸前 だけど民営刑務所は必要?
#犯罪
今年5月、山口県美祢市に、全国初の“民営”刑務所「美祢社会復帰促進センター」が開所した。“民営”刑務所といっても、アメリカ型刑事施設の「民営化」とは異なり、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)という、部分的な業務を民間企業に委託する、官民混合型の運営方式だ。PFIを導入した最大の目的は、現在、収容率115%という全国の刑務所の過密収容状態の緩和にある。独房に2人、あるいは6人部屋に8人が入れられているケースも珍しくなく、受刑者のストレスが高じ、ケンカなどのトラブルの要因にもなっている。とはいえ、国家予算だけでは早期の刑務所増設は難しい。そこで民間資金を活用しよう、ということなのである。
美祢の刑務所の収容対象は、刑期8年未満の初犯者に限られているが、刑法犯総数における再犯者率は50%を超えるといわれている。元刑務官は、その理由についてこう語る。
「いま、受刑者は社会的弱者ばかり、高齢者、身体・知的障害者、外国人。本来ならば、市民社会が受け入れるべき人たちです」
さらに、刑務所の過密状態をもたらしているのは、近年の“厳罰化”に最大の要因があるという。多くの刑事裁判を抱える弁護士のひとりは「以前ならば検察官が起訴しなかったようなケースでも、すぐに事件化するようになった。検察の“量刑相場”も確実に上がっている」と、語っている。その背景として“治安悪化”が指摘されるが、データ的に凶悪事件が増加しているという根拠はどこにもない。こうして見ると、本来ならば福祉施設での処遇、保護観察など拘禁代替措置が取られるべきケースも少なくないのではないか。アメリカでは刑務所の民営化によって“刑務所ビジネス”が跋扈した結果、刑務所が増えた分、収容者が激増するという本末転倒な現象も起きている。刑事施設において開放的なイメージは評価されるべきだが、民間業者の手を借りてまで、刑務所を増設する必要性があるのか?
(亀井洋志)
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