救急車たらい回し事件をめぐり 医師のブログが炎上(前編)
#事件 #ブログ #医療
8月末、奈良県で起きた妊婦救急搬送たらい回し事件。妊娠中の女性が腹痛と出血を訴え119番通報したが、救急搬送受け入れ先が見つからず、計10病院から受け入れを拒否され死産した。この事件をめぐってお医者サンたちが場外乱闘、ブログが炎上するという事態が起きた。
炎上したのは千葉西総合病院(千葉県・松戸市)の院長三角和雄のブログ。三角氏は8月31日のエントリで次のように書き込んだ。
奈良県の妊婦たらい回しは全く許せませんね。当院では、理由の如何を問わず救急を受け入れています。たとえベッドが満床だろうが医師が手術中だろうが、関係ありません。ベッドが満床でも救急処置ならできるはずです。また当直医師が手術中なら、自宅から他の医師を呼んで対応すればいいだけの事でしょう。働く気があれば、人を助ける気があれば、難しいことではありません。要は親方日の丸で、”救急の患者を受入れても自分の収入や評価が上がるわけでもないし、他の病院に行けばいいだろう。”と安易に考えるから、こんな事になるのです。自分がその患者様の立場だったらどうか、という事を考えたら、受け入れ拒否はしなかったはずです、絶対に。
これだけを読むと医者として正論を述べているようにも思える。だが、受け入れを拒否した病院の一つである奈良県立医大病院は、当日の当直医の勤務状況を公開しており、医師がかなりの激務であったことが判明した。さらに、受け入れ拒否された妊婦にかかりつけ医がいなかった(つまり妊婦健診を一度も受けたことがなく、感染症の有無や妊娠中の状態などが不明でリスクが高い)こともあり、「妊婦として常識に欠けるのではないか」と病院側への同情が集まりつつあった。
そんな中でのこの三角氏の発言に、2ちゃんねるでは「全世界の医者に朗報」「困ったら千葉西へ 」(←もちろんすべて皮肉)と祭り状態に。
さらに、近隣の開業医を名乗る匿名医師たちからは「先生の御専門は心臓ですが、重症の心不全を始め、重症患者を随分お断りになってますよねー」「救急お願いした1/3は断られておりますよ」と三角氏のブログに直接コメントが入った。
これに対し、三角氏は9月4日のエントリで次のように反論。
貴方が重症心不全と言って送ってきた患者様は悪性腫瘍の転移だったじゃないかなぁ? 人を批判する前に、きちんと診断できる臨床能力を身に付けたらどうですか? それに実際に断られたのなら、直接私に文句を言えばいいでしょう?<中略>BS(Bull Shit)的な書き込みへの対応は基本的にやりませんので、あしからず。
これがまた火に油をそそぐ形となり、「この地区の開業医に対する侮辱」と猛反発をくらい、コメント欄は大荒れになった。
その翌日、三角氏の秘書はコメントを全削除。後日のエントリでこう記した。
IT秘書「院長、何だか急にブログへのアクセスが増えて、10,000件にも届きそうな勢いですよ」
◯◯院長「どんだけー」
◯◯IT秘書「中傷メールもありましたよ」
院長「そんなの関係ねぇ」(小島よしお風に)
◯◯IT秘書「そう思ったので、院長が見る前に全部消しときました。うざいんで」
コメントの中には単なる中傷だけでなく、冷静な意見や質問も多数あったはずだ。
ちなみに、三角氏は心臓カテーテル治療の第一人者として世界的に有名らしい。「急患を絶対断らない」という発言は単なる思いつきではなく、三角氏の強い信念でもあるようだ。過去にも「24時間365日100%受け入れます(06年7月14日)」、「急患は絶対断らない方針です(07年7月6日)」と断言している。実際、院長の肩書きを持つ現在も自ら治療に当たり、新患も多数受け入れているようだ。といっても千葉西での診察は月曜日のみだが……。
三角氏はその後も“Mっ気が強く、批判とか中傷とかされると気分がハイになる”などと挑発的なことを書いている。しかしながら、本当に急患の1/3は断っているのか、明確な回答は出していない。(安楽由紀子/後編へ続く)
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