覚せい剤密輸の裏に道警!? 疑惑の告発者を直撃!
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3月14日に開かれた国連麻薬委員会において、警察庁によって「北朝鮮に、覚せい剤工場が少なくとも3つある」との報告がなされたと、同17日に各全国紙が報じた。
同庁の報告によれば、過去に摘発された7件の覚せい剤事犯の容疑者の供述や、押収された計約1500kgの覚せい剤の成分を分析した結果、3工場の存在が確認されたのだという。
これらの工場で精製された覚せい剤は、さまざまなルートで日本国内に密輸入されている。その結果、北朝鮮や国内外の裏社会の資金源となると共に、多くの中毒患者を生み出しているのだ。
ところが、こうした覚せい剤の密輸を、北海道警察が黙認していたという衝撃的な疑惑が持ち上がっている。それを告発しているのは、ノンフィクション作家の曽我部司氏。その内容は、先頃発売された著作『白の真実 警察腐敗と覚醒剤汚染の源流へ』(エクスナレッジ)に詳しく、膨大な取材量から、疑惑の信ぴょう性は高いという印象を受ける。曽我部氏の見解は次のようなものだ。
「拳銃押収の実績は、ほかの検挙実績よりも高く評価され、捜査費の分配も多くなる。このため、道警は犯罪者を捜査協力者に仕立て上げ、拳銃のヤラセ押収を行った。その代わりに、盗難車の密輸出や、覚せい剤の密売・密輸入が目こぼしされ、ついには道警元警部・稲葉圭昭が自ら覚せい剤を暴力団関係者に密売するまでに至ったんです。この02年の稲葉事件がきっかけで、その背後の闇が見えてきたんです」
その闇とは、こうだ。北朝鮮で精製された覚せい剤が、ロシアマフィアを通じて北海道に密輸入され、暴力団を通じて全国に流通されている。その量は年間で数トンになるという。一方、2005年の国内の覚せい剤押収量は124・5kg。すでに流通したものを摘発するのでは追いつかないというのが実情だ。となれば、密輸入の阻止、という水際での対応が効果的なわけだが、これを警察当局は、前述の理由で目こぼししてきたのだという。
これが事実であれば大問題であるが、道警を中心とした警察の裏金問題では大々的な追及キャンペーンを展開したマスコミは、なぜか飛びつかない。稲葉事件は、一警察官の逸脱した行為、という解釈で落ち着いている。だが、ここには、マスコミによる、警察への目こぼしが存在すると、曽我部氏は指摘する。
「道警が、記者クラブを締め付ける方向に向かったんです。マスコミは、稲葉事件についてこれ以上追及すると、ほかの事件に関する道警の情報を得難くなると考えたんでしょう。市民生活とは一見無関係なため、ニュースバリューがあるとも思っていないんです」
『白の真実』は、警察批判を結論とするわけではなく、さらに取材を進め、北海道に蔓延する覚せい剤密輸入の構造を次第に明らかにしていく。
「警察官の中には、密輸を検挙したいと感じているものの、組織が動かないためにそれができないでいる人が大勢いる。そうした人たちの期待もあると思う。この本が出版されることによって、覚せい剤密輸の摘発に向けて組織が動かざるを得ない状況に持ち込むのが、自分の仕事だと思っています」
では、同書の内容を、道警はどうとらえているのだろうか? 道警広報課に問い合わせると「その本が出版されたことを知りませんし、その作家の方が書かれた本について何かコメントする、という立場にはありません」という回答であった。曽我部氏は、道警関係者にも多数取材を行っており、同書は道警内では波紋を呼んでいるともいわれているが……。
道警関係者によると、「この本に書かれた情報を参考に捜査資料をつくっている捜査員もいる」という。また、警察ではなく、海上保安庁や検察が、近く密輸犯を摘発するという情報も道内では流れだしている。事件が表立ったとき、マスコミは、表層の報道にとどまるのか、密輸に絡む道警の闇にもメスを入れるのか。報道機関としての真価が問われる。(逸見信介/「サイゾー」6月号より)
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