新型インフルエンザが中国の傲慢で被害増大!?
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はしかの流行により、あらためて感染症の脅威を痛感させられた日本で、今度は新型インフルエンザ問題が持ち上がっている。すでに、中国やインドネシア、エジプトなどでは、鳥インフルエンザの人間への感染が報告されており、WHO(世界保健機関)の3月までの集計では、世界で282人が感染、うち169人が死亡している。この鳥インフルエンザウイルスは、人間への感染を経ることで、新型ウイルスへと変異し、より容易に人間間で感染するようになるとされているのだ。厚生労働省によると、新型インフルエンザが国内で発生した場合、感染者数は2500万人、約64万人が死亡することもあるとしている。
これに対して、厚労省では防疫策のガイドラインをまとめ、インフルエンザの指定感染症(これにより、感染患者に入院勧告などを行える)への適用期間を1年間延長するなどの対策を講じている。だが、防疫を考える上で、さらに解決しなければならない問題がある。台湾のWHO未加入問題だ。
「台湾は領土の一部」と主張する国連常任理事国の中国の強い反発もあり、台湾は、国連やその専門機関であるWHOに加盟できていない。WHOでは、感染症に対峙する場合、加盟国間で情報交換・共有や医療の人的・技術的な相互補完を行い、国際的な防疫ネットワークを構築している。ところが、WHOの協力が得られない台湾は、感染症が発生・拡大しやすい環境に置かれている。ひいては、台湾と年間300万人もの人的交流がある日本も、大きな危険にさらされているといえるのだ。現実に、03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るった際も、台湾では220人が死亡、感染者である台湾人医師が来日したことで大騒動となった。この際も、台湾のWHO未加入問題は国際問題化しているのだ。
こういった状況を受け、4月17日、台湾の医師の集まりである「財団法人台湾医界連盟基金会」(医界連盟)が「台湾のWHO正会員実現を支援する会」を開催し、世界17カ国のマスコミが取材に訪れた。同連盟の呉樹民・理事長は、「SARSが流行した際は、自国の的確な対策もあり、結果的には他国への感染を防げたが、一歩間違えれば、世界に広まっていた。そうなっていたら、各国は台湾を世界の公衆衛生システムの外に孤立させていることの愚かさに気づいたはずだ」と、WHO加盟が認められない現状を批判した。
また、台湾は正式加盟の前段階として、WHO総会などにオブザーバーとして参加できるよう10年前から運動を展開しているが、こちらも実現していない。同国の陳水扁総統も「中国の妨害によって、2300万人の台湾国民の生命と健康が危険にさらされている」と語気を強めて主張するなど、台中間の緊張はさらに高まっている。
一方、日本は、麻生太郎外相が3月の参議院外交防衛委員会で「日本は台湾の近くに位置し、影響を受ける確率も高い」と述べた上で、台湾のWHO加盟を支持している。だが、靖国参拝問題や教科書問題など、対中関係にナーバスな現政権が、台湾のために中国に強く出ることは考えにくい。日本も両国の間で板挟みの状況なのだ。
これでは、台湾のWHO加盟の早期実現は難しいだろう。そうなると気になるのが、台湾国内の新型インフルエンザ対策だ。筆者はSARSで20人以上の死者を出した台北にある和平市立病院を訪ねた。同病院の呉振龍副院長は「SARSの治療・感染予防の経験を生かして、新型インフルエンザの予防に取り組む」と強調。隔離病室や、医師、看護師など病院関係者がまとう防護服の準備などを進めていることを説明した。だが、いくら万全を尽くしても、「感染を完全に防ぐことはできない」と言う。少しでもリスクを下げるには、台湾のWHO加盟は必須だ。
中国と台湾を行き交う人は年間400万人。中国の判断は、自国民ならず、他国民も危険にさらしている。「防疫に国境はない」ことを一日も早く理解してほしい。(舘澤貢次/「サイゾー」7月号より)
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