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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 44人を死に至らしめた“日本一の歓楽街”火災事件の闇 現場の目撃情報をたどり、消えた「血まみれの男」を追う──
日本“未解決事件”犯罪ファイル

44人を死に至らしめた“日本一の歓楽街”火災事件の闇 現場の目撃情報をたどり、消えた「血まみれの男」を追う──

kabukiimage.jpgイメージ画像

何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく……。数多くある事件のなかでも、いまだ犯人・被疑者の捕まっていない”未解決事件”を追う犯罪糾弾コラム。

第24回
歌舞伎町一丁目雑居ビル火災に伴う多数焼死事件
(2001年9月)

 2001年9月1日、深夜でも人々の往来が途絶えることのない“日本一の歓楽街”新宿・歌舞伎町。秋の到来などみじんも感じられないほど蒸し暑い夜、事件は起こった……。

 午前1時を回る少し前、一番街の路上を歩いていた通行人から「ビルの3階から人が落ちた!」という119番通報が寄せられる。直後、救助を求める電話が繰り返し鳴り響いた。

「火事です、ものすごい煙です!」
「まだ何人も中にいます! 助けて!!」
「逃げられない……早く来てくださいっ!」

 まさに、現場からの悲痛な叫びだった。

 くしくも関東大震災から78年目のこの日は「防災の日」に制定されているため、全国各地で防災訓練などが行われる記念日。しかし、日付が変わって間もなく、新宿区歌舞伎町1-18-4「明星56ビル」で火災が発生し、44名死亡・3名負傷という大惨事が起きてしまった。ちなみに、日本で発生した火災では戦後5番目の死者数である。

 事件現場となった「明星56ビル」は、地下2階・地上4階建ての雑居ビル。過去の消防署の立ち入り検査でも、火災報知器の不備などが何度も指摘されていたという。その原因ともいえるのが、土地・建物の権利関係。契約が極めて複雑になっていたため、防災管理が行き届かない状態になっていたのである。事件当時、階段には看板などが乱雑に置かれ、火災報知機は「誤作動が多い」との理由で電源が切られていた。

 火の手が上がったのは、ビル3階の麻雀ゲーム店「一休」のエレベーター付近。内部で火災が起きていることに気付かずに扉を開けた店員は、密閉空間にたまった一酸化炭素ガスが酸素と結びついたときに起きる“バックドラフト現象”により、あっという間に炎に包まれてしまう。パニックに陥ったこの店員が道路沿いの窓から飛び降りたため、先述の「人が落ちた!」という通報に至ったというわけだ。「一休」の別の店員2人は窓から屋根伝いに脱出したが、3階から発生した炎は、おびただしい黒煙とともに4階へと広がっていく。この事態に気付いて119番通報したのは、4階のキャバクラ「スーパールーズ」の従業員女性である。同店は当時流行していた“抱きキャバ”と呼ばれる接客サービスがウリで、雑誌でもたびたび取り上げられる人気店としても知られていた。どんどん煙が充満していく店内から、午前1時の通報のあとに悲痛な声で2回、「外に出られない! 助けて!!」と救助の要請があったという。

 数時間後、全身が真っ黒にすすけたセーラー服姿の女性たちが、消防車から伸びたはしごを上下するゴンドラに乗せられ、次々と4階の窓から運び出されていた。あまりに衝撃的な光景である。結局、ビルの中にいた全員が外に出られたのは、火災発生から約3時間がたった午前4時だった。しかし、消防隊員による命懸けの救助活動もむなしく、警察は全員の死亡を発表。犠牲者の内訳は「一休」店員2名と客15名、「スーパールーズ」店員16名と客11名の合計44名で、全員共通の死亡原因は“急性一酸化炭素中毒”だった。ビルにいた人間で、命が助かったのは、真っ先に脱出した3人だけである。

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