富士スピードウェイに賠償命令 F1日本GP“ずさん運営”裁判に見た、トヨタの「金儲け主義」と「責任転嫁体質」
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トヨタ関連の招待客を乗せたバスが次々に通り抜けた。
2007年9月末に富士スピードウェイ(以下、FSW)が開催したF1日本グランプリの運営はずさん極まりなく、「劣悪な環境の中、長時間のバス待ちを余儀なくされ、精神的苦痛を受けた等」として観客がFSWに対し、損害賠償を求め訴えていた。
13年1月24日、東京地裁はFSWの過失責任を認め、原告53名に対し賠償の支払いを命じた。
FSWが開催した07年F1日本グランプリでは「チケット&ライドシステム」と呼ばれる、各アクセスポイントから専用シャトルバスで来場する方式を取り、観客が自家用車やバイク、自転車など、ほかの交通手段による来場を基本的に禁じていた。
そのため、観客は渋滞や事故など不測の事態があっても自由に交通機関を変更することができず、指定されたシャトルバスを待つよりほかなかった。そのためシャトルバスを正常に運行し、観客をアクセスポイントからに会場まで円滑に送り届けることは、主催者FSWの義務である。ましてやシャトルバスの運行が滞り、レース開始に間に合わないなどといったことがあっては許されない。しかしFSWのずさんな計画で、その「まさか」が起きてしまったのだ。
FSWはF1開催前にリニューアル工事を行い、14万人の観客を受け入れることを決定した。これは、当時鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリの動員数と同等の観客数である。しかし、鈴鹿サーキットとFSWとでは立地が大幅に異なる。
鈴鹿サーキットは街中に存在し、電車は白子駅、平田駅、鈴鹿サーキット稲生駅が利用可能で、特に稲生駅からは徒歩30分と交通至便である。マイカー利用も多く渋滞するため、名古屋駅から近鉄を利用し白子駅まで来て、シャトルバス(有料)やタクシーを利用する観客も多い。F1ドライバーも付近の渋滞を嫌ってこの近鉄電車を利用することがあり、2012年にはアロンソやウェーバーがファンのサインに快く応じる姿がTwitterで報告されている。
一方、FSWは標高500~600mの高地に位置し、背後に1,000mクラスの峠を控えているためアクセス道路は限られる。付近に電車の駅はなく、一番近い御殿場線駿河小山駅でも7.5km、徒歩1時間40分かかる上、歩道のない峠道を歩くことになるため現実的ではない。
そのためメインの移動手段はクルマに限られるわけだが、道路インフラが貧弱なために観客3~5万人の国内レースの規模であったとしても付近道路に大渋滞が発生し、問題となっていた。そこに14万人の観客を入れようというのである。たとえサーキット場内の収容人数が鈴鹿サーキットと同等になったとしても、交通手段がなければ来場は不可能である。レースファンからは、新規にモノレールや新交通システムなどが必要ではないか、といった声が上がるほどであった。
F1開催を見据えて行われたFSWのリニューアル工事は、サーキット施設、パドック、ゲートなど場内設備への投資に終始し、交通公共機関は整備されなかった。その代わりに、交通手段はある施策を取ることにする。それが観戦チケットと交通機関をセットにした「チケット&ライドシステム」である。
マイカーでの来場や徒歩での入退場を禁止するなど、観客の交通の自由を犠牲にする代わりに、FSWが交通計画をしやすいシステムである。この導入決定時においては、レースファンもFSWの立地、アクセス道路の少なさを理解し、この「チケット&ライドシステム」の導入はやむを得ない、親会社トヨタの生産方式を見る限り信頼できるという反応であった。
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