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震災が浮かび上がらせた「本」の意味、「書店」の役割とは?『復興の書店』

fukoshoten.jpg『復興の書店』(小学館)

 東日本大震災後、岩手、宮城、福島から本が消えた。

 本だけではない。書店も消えた。2011年4月の時点で、東北全体の9割の書店が震災によって被害を受け、岩手、宮城、福島の3県では70以上の書店が全半壊。さらに、廃業を余儀なくされる店も、その後の数カ月で20軒近くに増えていった。

 流通網は途切れ、本が思うように流通できない時期が1カ月近く続いた。とくに、情報を最も切実に欲していた福島県沿岸の書店には、原発事故の影響でより一層、到着が遅れた。

 そんな混乱の中にあって、震災による被害を受けてなお「本」を届けようとする人たちの姿は、同じ紙の本にかかわる仕事をしている自分たちが記録し、伝えるべきことの一つではないか?

「週刊ポスト」(小学館)編集者のそんな提案で、ノンフィクション作家の稲泉連氏が現地へ飛んだ。断続的に続けてきた連載に大幅加筆して出来上がった本が『復興の書店』(同)だ。

 岩手県内に3店舗を展開するブックポートネギシの本店・地ノ森店は、津波によって跡形もなく流された。書店員だった高橋葉子さんは、店が津波にのみ込まれていく一部始終を目の当たりにした。

「見たというよりも、見てしまったっていう感じで……。お店が完全に浸水してしまったときはつらくて、もうそれ以上見ていたくないと思いました」(本文より一部抜粋)

 だが猪川店は、ほとんどの商品が床に落ち、店内はめちゃくちゃになっていたものの、建物自体は難を逃れた。町で残った唯一の書店ということもあり、客が殺到した。

 3月15日、三陸沿岸でもいち早くお店を再開させると、「アサヒグラフ」(朝日新聞出版)や「フライデー」(講談社)、「フォーカス」(新潮社)といった緊急発売された写真週刊誌、震災を特集した各週刊誌をはじめ、『心に響く「弔辞」―葬儀のあいさつ実例集』(新星出版社)や『1000万円台で建てた家』(ニューハウス出版)といった書籍、中古車情報誌「Goo」などの雑誌も瞬く間に売れていった。その様子には、書店には似つかわしくない、どこか切迫した雰囲気があったという。 

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