『みなさん』『めちゃイケ』チーム制バラエティが流行らなくなった理由とは……?
#お笑い #フジテレビ #とんねるず #めちゃ×2イケてるッ!
2018年のテレビお笑い界で最も大きいニュースの1つは『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系、以下同)と『めちゃ×2イケてるッ!』が終了したことだろう。どちらも若い世代の視聴者を中心に圧倒的な人気を誇り、一時代を築いたフジテレビの看板番組である。同じく長きにわたって同局を支えてきた『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』が終わったのに続いて、2つの伝説的な番組が最終回を迎えた。
『めちゃイケ』という番組には1つの大きな特徴がある。それは、レギュラー出演者が一丸となって家族的な連帯感を持って企画に挑む「チーム制」のバラエティ番組だったということだ。『めちゃイケ』のレギュラー陣は番組内で「めちゃイケメンバー」と呼ばれ、そこには独特の絆のようなものが感じられた。
また、『みなさん』でも、初期にはとんねるずの2人に加えて番組の裏方スタッフが出演者としてしばしばコントに参加していた。偉そうに振る舞うとんねるずと、それに振り回されて理不尽な目に遭うスタッフたち。彼らは部活の先輩と後輩のような関係を築いていた。近年に入るとスタッフの出演は減り、おぎやはぎ、バナナマンなどの芸人が準レギュラーとして出ることが多くなり、チームとしての一体感は薄れていった。ただ、こちらも初期は間違いなく「チーム制」の番組だったといえる。これら2つの番組が同時期に打ち切りを迎えたというのは、「チーム制バラエティ」の時代が終わったということを意味している。
かつてのお笑い系のバラエティ番組ではむしろチーム制が主流だった。その源流は『オレたちひょうきん族』である。ビートたけし、明石家さんまを中心にして旬の芸人たちが多数出演していた。その後、フジテレビではとんねるず、ウッチャンナンチャン、ダウンタウンを中心にしたチーム制バラエティが次々に作られて、人気を博していった。当時はそういう番組のレギュラー陣に名を連ねることが若手芸人の目標だった。『はねるのトびら』ぐらいまではその神話が続いていた。
しかし、その後、フジテレビのチーム制バラエティは低迷期に入った。『はねトび』以降に作られた若手芸人中心のコント番組はいずれも長続きしなかった。唯一、『ピカルの定理』だけは渡辺直美の活躍もあってそれなりの結果を残したものの、社会現象になるようなブームを起こすには至っていない。
なぜチーム制バラエティは流行らなくなったのか。その理由の1つは、最近の視聴者がそれを求めていないということだろう。チーム制バラエティの売りは、出演者が一体感を見せることで、それを毎週熱心に見ている視聴者もその輪の中に加わったような気持ちになれる、という点にある。
しかし、今どきの視聴者はそれほどの熱を持ってテレビを見ていない。スマホなどのツールが身近にあるのに比べると、テレビは「とりあえずつけておくだけ」という「ながら見」が主流になっている。そういう視聴環境の中では、毎週同じ番組を見て、徐々に出演者に親しみを感じて、そこに自分も加わったような気分になる、という過程をたどるのは難しいだろう。
人々の趣味嗜好は細分化されていて、ネットの普及で同じ趣味を共有する人とだけつながることも容易になっている現在、1つのバラエティ番組にこだわり、そこに深く思い入れを持つのは困難である。多くの視聴者はもはやチームとしての一体感をテレビに求めていないのだ。
さらに、そもそもチーム制バラエティに適応できる人材がいない、という出演者側の事情もある。チームには強力なリーダーシップを持つ人間が必要だ。明石家さんま、とんねるず、ダウンタウンといった歴代のカリスマ芸人にはその資質があった。しかし、それより下の世代でMCを務めている芸人には、そういうタイプの人がほとんどいない。強引に場を引っ張っていくようなことはせずに、どんなゲストにも柔らかく対応する調整型の芸人ばかりだ。そういう芸人はMCを務めることはできても、チームのリーダーになることはできない。
最近のテレビでマツコ・デラックス、有吉弘行、坂上忍といった顔ぶれが活躍しているのも、彼らがもともと卑屈な性格の一匹狼タイプだからだ。彼らには上の世代のタレントのような強力なリーダーシップがない。ただ、その分だけ波風を立てずに場を仕切ることができる。そういうタイプの方が今の時代には合っている。
8月8日に出版された私の著書『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)では、このテーマについてさらに詳しく書いている。興味を持たれた方はぜひ読んでみてほしい。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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