全国屈指でも蔵書数は1万2,000冊程度……電子書籍図書館がショボくて、青空文庫ばかりの理由とは?
#本 #地域 #図書館
全国屈指の蔵書数を誇る図書館が、神奈川県綾瀬市に誕生した。
ただし、電子書籍に限ってである。綾瀬市は、市内に鉄道駅がないという自治体。これまで図書館はあっても交通アクセスが不便なために利用率は低い。そこで、来館しなくても利用できる電子書籍の貸し出し導入を決めた。
気になるその蔵書数は、1万2,000冊!!
……聞いて驚くが、とてつもなく少ない。おまけに、そのうち1万1,000冊は「青空文庫」に公開されているものの中から、図書館が選んだものだ。
図書館側では「利用者の利便性を重視した結果」としている。とはいえ、青空文庫はサイトにアクセスすれば、誰でもすぐに読むことができるもの。対して、綾瀬市立図書館の場合には、利用者登録が必要になる。
今後、蔵書数は青空文庫のもの以外も増やして2万冊前後になる予定とはいうが、現状サイトにアクセスしても、選書意図がまったくわからないラインナップになっている(https://ayase.libraryreserve.com/10/50/ja/Default.htm)。
それでも、蔵書数は全国屈指。それが、現在の日本における電子書籍図書館の現状なのである。すでに海外では電子書籍の貸し出しを実施している図書館も当たり前だが、日本は、まだまだ発展途上。別に綾瀬市だけでなく、電子書籍の貸し出しを行っている多くの図書館が、青空文庫の貸し出しを実施しているのだ。
こんなに普及が進まない背景には、電子書籍の維持費の高さがある。
「電子書籍の貸し出しを実施すると、本そのものの購入費のほかに、サーバーの維持費などがかかってきます。ですから、紙の本よりも購入できる冊数は少なくなるのです」(都内の図書館司書)
さらに、現状では電子書籍のフォーマットが統一されていない。それもまた、提供される電子書籍が限られる理由となる。
「問題は山積みですが、将来的には来館しなくても本を借りることができるメリットが生きてくるはず。まあ、長い目で見まもったほうがよいですね」(同)
青空文庫ばかりになっているのは、あくまで「実験段階」だから。今後の進捗を見守ることにしたほうがいいのかも。
(文=是枝了以)
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