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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 瑛太の自傷シーンがトラウマ級の衝撃
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.480

元少年Aになりきった瑛太の自傷シーンはトラウマ級の衝撃!! 連続児童殺傷事件のその後『友罪』

薬丸岳のミステリー小説を映画化した『友罪』。社会からドロップアウトした者たちの居場所探しの物語となっている。

 もしも、最近知り合った仲間が人に話せない秘密を抱えていたら。もしも、その秘密が償いきれないほどの重い罪だったら……。少年犯罪をテーマにしたミステリーものを手掛ける薬丸岳の小説『友罪』(集英社)が、生田斗真&瑛太主演作として映画化された。2人の熱演を引き出したのは、光市母子殺害事件をモチーフにした『ヘヴンズ ストーリー』(10)でベルリン映画祭国際批評家連盟賞を受賞した瀬々敬久監督。今回の『友罪』も実在の事件を連想させることで話題を呼んでいる。

 主人公となる益田(生田斗真)は元週刊誌記者。部数やスキャンダル性を重視する編集方針に不満を持ち、勤めていた出版社を退職してしまう。ジャーナリストとしての夢を捨て切れない益田だったが、家賃を払うこともできず、急場しのぎで寮付きの町工場で働き始める。同じ日に入寮したのが、鈴木(瑛太)だった。人とコミュニケーションすることを避けている鈴木に、益田は妙に惹かれてしまう。中学のときに自殺した同級生と雰囲気がよく似ていたからだった。

 益田も心にキズを負っていることを察知した鈴木は、次第に益田に対して心を開くようになる。慣れない工場での仕事中、益田は不注意から指を切断してパニックに陥ってしまう。益田の窮地を救ったのは鈴木だった。冷静に状況を見ていた鈴木は、益田の切断された指を氷で冷やしながら保存し、益田は接合手術に成功する。熱心な仕事ぶりもあって、鈴木の職場での評価が高まる。

週刊誌記者の清美(山本美月)。元少年Aは今どうしているのかを、マスコミは世間に伝える役割があると主張する。

 だが、平和な日々は長くは続かない。益田は元同業者である週刊誌記者の清美(山本美月)から最近起きた児童殺害事件についてのアドバイスを頼まれ、ネット検索をしているうちに、かつて日本中を震撼させた連続児童殺傷事件の当時14歳だった加害者少年と鈴木の顔がよく似ていることに気づく。鈴木は少年院を出所し、偽名を使って生きてきた元少年Aなのか? 益田は鈴木の隠された過去を調べずにはいられなくなってしまう──。

 2013年に発表された薬丸岳の原作小説はあくまでもフィクションだが、原作で触れられる「黒蛇神事件」(映画では『五芒星事件』)は1997年に起きた“酒鬼薔薇事件”を連想させるものとなっている。酒鬼薔薇事件を起こした元少年Aといえば、2015年に出版された元少年A自身の手記『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版)がベストセラーになったことが記憶に新しい。元少年Aの出所後のストーリーは、『友罪』と『絶歌』でかなり重なり合う部分がある。

『絶歌』の前半部分は頭でっかちなリアルモンスターとしての少年Aの共感不可能な禍々しい日常が描かれているが、少年院を経て実社会に出た元少年Aはゴミ収集車に乗って初めての労働を体験し、また仕事仲間と触れ合うことで、生きることの喜びを実感する。それまで、ずっと死ぬことしか考えていなかった元少年Aは、仕事を通して現実世界と繋がり、それと同時に自分が犯した罪の重さをようやく思い知ることになる。

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