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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > ヤクザ映画のオマージュ『孤狼の血』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.478

映画じゃけぇ、何をしてもええんじゃ!! 男根から真珠を取り出すシーンが強烈すぎる『孤狼の血』

『仁義なき戦い』の世界を現代にリブートした東映映画『孤狼の血』。役所広司と松坂桃李とのバディムービーとしても楽しめる。

 森林浴ならぬ、人間浴はいかがだろうか。せっかく人影もまばらな森や山できれいな空気を吸っても、街に戻ればストレスの多い人間関係に悩まされてしまう。それならいっそアクの強い人間たちにもみくちゃにされ、免疫をしっかりつけておきたい。最新の“人間浴映画”としてお勧めしたいのが、役所広司&松坂桃李主演作『孤狼の血』。実録犯罪映画『凶悪』(13)や『日本で一番悪い奴ら』(16)で注目を集めた白石和彌監督が、東映ヤクザ映画へのオマージュをたっぷり注いだ激熱作品となっている。登場人物は男も女もみんなワケありで、人間くさいキャラクターばかり。劇場を出るときは、きっと誰もがタフガイを気取って、歩道の真ん中を闊歩したくなるはずだ。

 本作の時代設定は、まだ暴対法が施行されていなかった昭和63年(1988)。深作欣二監督が撮った実録ヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』(73)と同じく広島が舞台。柚月裕子の原作小説では広島県呉原市という架空の街となっているが、映画のロケ地は『仁義なき戦い』にあやかって呉市で行なっている。菅原文太、松方弘樹、金子信雄、田中邦衛、梅宮辰夫らが人間くささを競い合った『仁義なき戦い』シリーズや『県警対組織暴力』(75)の世界を現代に蘇らせようという試みだ。

ヤクザを監禁した大上(役所広司)は、ヤクザの局部を切開し、真珠を抜き出そうとする。原作小説にはない、白石監督こだわりの演出。

 昭和の男優たちがギラギラと輝いた『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』の世界を愛して止まない白石和彌監督のこの試みに、『シャブ極道』(96)で薬物中毒に陥る破滅的な暴力団組長を熱演した役所広司が期待を裏切ることなく応えてみせる。呉原署に勤めるマル暴刑事の大上(役所広司)、通称ガミさんはヤクザよりもヤクザらしい。昔気質の地元暴力団「尾谷組」と新興暴力団「加古村組」が対立する中、ヤミ金融マンが失踪する事件が発生。大上は事件の真相を探るため、パチンコ店で見かけたヤクザを恫喝し、さらには捜査に非協力的な旅館に付け火をする。大上と行動を共にする新人刑事・日岡(松坂桃李)は、大上のあまりの傍若無人ぶりに驚きを隠せない。

「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ!」と叫びながら、大上が連れ込み宿に監禁した「加古村組」の構成員・吉田(音尾琢真)を拷問するシーンはひと際強烈だ。好色な吉田の自慢は、男性器の中に埋め込んだ“ごっつい真珠”。大上は吉田をベッドに縛り付け、ごっつい真珠を刃物を使って取り出してみせる。もちろん、ノー麻酔で。ごっつい真珠で多くの女たちを泣かせてきた吉田は、自分もその真珠で泣くはめになる。大上はこの街では怖いもの知らずの存在だった。

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