17.3%有終の美! 木村拓哉『BG』が突きつけた「もうドラマに物語は必要ないのか」問題
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木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)の最終回。視聴率は17.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と過去最高を記録。見事、有終の美を飾りました。
『BG』は初回、15.7%スタートでした。このとき私は、この数字は「重い十字架になる」と書きました。あまりに荒唐無稽、支離滅裂で“キムタク推し”一辺倒のシナリオを見て、視聴者離れを確信したのです。
「終わってみたら『連ドラ史上、最大の下げ幅』という記録を作ってしまうかもしれない」
実際には、まったくそんなことはありませんでした。下げ幅どころか、中盤から視聴率は右肩上がり。最終回の瞬間最高視聴率は22.3%を記録したそうです。ネット上には大手マスコミの絶賛記事が並び、続編も期待されているとか。
もうね、ホントに白目になってしまいます。だって、第1話を見終わったときと、最終回まで見通した今と、シナリオに対する印象が、まったく変わってないんだもの。「こんなの、連ドラ史上、最大の下げ幅を記録してても不思議じゃないだろ」と思ってるんだもの。面白いとかつまらないとか、そういう評価以前に、評価されるべき物語が提示されてないんだもの。
そんなわけで、最終回を中心に『BG』というドラマ全体を振り返ってみたいと思います。
(前回までのレビューはこちらから)
■撮影部の頑張りが光りました
以前にも書きましたが、『BG』は撮影がすごくいいドラマです。自然光で印象に残っているのは、何話目か忘れましたが、夕方のサッカー場のシーン。キムタクと満島真之介がなんやかんやあって、その後、チームの人たちを煽り気味で撮ってたカットなんて、マカロニ・ウェスタンっぽくてカッコよかったですねえ。
この最終回では、薄暗い部屋の中でキムタクと少年が語り合う場面、その後の乱闘のところとか、照明がばっちり決まって美しかったです。
こうした撮影のよさは、もしかしたら『BG』にとって最優先項目だったのかもしれません。このドラマはキムタクのカッコいいキメシーンが毎回用意され、そのキメシーンに向かって作られていました。だから、そのキメシーンがカッコよくないと『BG』には見どころが何もなくなってしまう。
つまり、最初から「お話はどうでもいいから、キムタクをカッコよく撮ろう」というコンセプトだけがあったということです。
■島崎章であることすら捨てられた
後半に入り、「お話のどうでもよさ」に拍車がかかります。山口智子がゲストで登場したシークエンスでは、もうキムタクは島崎章ですらありません。『ロングバケーション』(フジテレビ系)の瀬名くんです。ドラマが島崎章の人生を描くことより、キムタクと山口智子の22年ぶりの共演という絵面、話題性を優先したということです。
最終回のラストシーンもまた、島崎が島崎であることの意味を放棄しています。武道館の前で、ド派手なロールスからYAZAWAが登場する。YAZAWAがキムタクと言葉を交わす。そのままドラマが終わってしまう。「VIPだろうがパンピーだろうが警護対象には云々」とか数分前に言ってた島崎は、もうどこにもいない。
こうした超大物のカメオ出演がラストシーンを飾った作品というと、映画『メリーに首ったけ』(1998)のブレッド・ファーブを思い出します。しかし、あれはオチとしてファーブの登場に物語としての意味がありました。今回のYAZAWAには意味がありません。大物が出た、という話題性だけです。全9話かけて語ってきた島崎章の人生は、数分のYAZAWAより価値がないと、自ら宣言しているのです。
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