宮沢りえ『Santa Fe』の“持ってるだけで違法”騒動で、古書店主が恨み節「処分しちゃった……」
#宮沢りえ
「大した被害額ではないですけど、ちょっと恨みますよ」
埼玉県内の古書店の店主は2年ほど前、店頭で販売していた宮沢りえの写真集『Santa Fe』(朝日出版社)を撤去し、廃棄処分したという。
「お客さんから『法改正で児童ポルノになったので、持っているだけで違法ですよ』と言われたんです。日刊スポーツで弁護士が『持っているだけで摘発される』と言っている、という記事を見せられ、これは危ないと思い処分したんです。でも、最近になって、同業者から『違法じゃないらしい』と聞いたんです」
2015年8月、日刊スポーツのWeb版に「サンタフェ持ってたら逮捕?児童ポルノ法改正1カ月」という見出しの記事がアップされた。児童ポルノ事件を数多く手掛けている弁護士のコメントとして「単純所持罪の条文を厳密に適用すればサンタフェを自宅に持っているだけでも摘発される」と記された同記事は、児童買春・ポルノ禁止法の改正で、18歳未満の児童ポルノの写真などを持つことが禁止され、宮沢の写真集もそれに該当するという内容だった。
同写真集は、1991年に当時人気絶頂のアイドルだった宮沢が、衝撃のヌードとなったもの。写真家の篠山紀信氏が撮影を手掛け、150万部のベストセラーになった。
記事では、撮影時に宮沢が18歳未満であったかどうか断定してはいないのだが、これに異論を出したのが出版関係者や別の弁護士らで、宮沢が撮影に臨んだ91年5月22日から30日は、18歳1カ月であったと指摘したのである。しかし、その続報は大きく広まってなかったようで、日刊スポーツの「サンタフェ持ってたら逮捕?」という誤解の方を信じたままの人が多いようだ。
事実、Twitterでは16年になっても「自宅にSanta Feあるけど捨てないと逮捕なのかね」とつぶやいている人が確認でき、昨年も多数の人々が「サンタフェを持っていると児童ポルノ法に問われる」「撮影当時、宮沢りえは17歳だったらしい」といった会話を交わしている。これには悪徳商法やカルト団体などの問題への取り組みで知られる紀藤正樹弁護士も1月22日、「事実確認せず評論する弁護士の方に多大な問題があります。記事は削除済みみたいですが、まずは訂正すべきだと思います」と、違法性を主張した弁護士の見解に異を唱えているほどだ。
写真集に詳しい大手出版関係者によると「サンタフェは絶版になっているので新品の販売はなくとも、いまだ誤解が解けず、ネット書店などでも現在まで中古売買どころか掲載もしていないところがある」という。
「ただ、誤解の発端は日刊スポーツの記事が出る以前の政治家たち。09年の衆議院で、当時民主党だった枝野幸男議員が、『サンタフェも児童ポルノに当たるのか』という質問をし、自民党の葉梨康弘議員が『1年間の猶予期間内で廃棄するのは当然。大手の出版社であろうが有名な女優であろうが関係ない話』と答えたんです。写真集を買った150万人が罪に問われるのかという論争でしたが、その前提が間違っていたわけで、質問者と回答者、両政治家が誤解をさせたといえます」
結局、こうした風評を受けて商品を廃棄してしまった古書店の店主は、どこにもぶつけられない不満を抱えているというわけだ。紀藤弁護士の言うように、政治家も弁護士もメディアも、誤解を解く作業をしていないというのは問題があるかもしれない。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)
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