「はれのひ」は氷山の一角……? 苛烈な営業電話で“高額契約”迫る呉服業界の闇
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成人式当日突然に閉店して社長ら経営陣が姿をくらましたままの横浜市の振り袖レンタル会社「はれのひ」は、民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、一昨年9月の時点で6億円を超える負債があり、3億円以上の債務超過に陥っていたという。そのためか昨年からは従業員への給与も遅延や未払いが出ていたが、実はこの会社、問題が表面化する以前から、その営業手法が一部であまり評判がよくなかったようだ。
「とにかく、しつこい。何度も電話をかけてきて『晴れ着の準備を』って。断ってもかけてくるので、最終的には『うるさい!』と怒鳴ってしまった」
「姉の振袖を使うのでと断っても、今年の流行デザインは違うとか、小物のプレゼントがあるとか延々と話を止めなくて、途中で電話を切った」
こうした声は、「はれのひ」からの度重なる営業電話を受けた人々のもので、特に14年頃から「不快・迷惑」度を増していたようだ。何しろ「うちの娘は海外留学中で日本の成人式には出られないのに営業電話が来た」という人もいたのである。
証言者たちが首を傾げていたのは、「はれのひ」がどうやって成人式を迎える娘のいる家庭を知っていたかということ。これは別の呉服レンタル業者が打ち明ける。
「『はれのひ』だけじゃなく、ほとんどの同業者はやってることなんですが、名簿業者から学生名簿を大量に買うんです。必要なのは年齢、性別と電話番号だけで、片っ端から電話をかけるんです。従業員には、商談がまとまれば売り上げ1~2割の歩合ボーナス、つまりインセンティブを出す形にするのが通例。単価が高い世界なので、50万円の売り上げなら5~10万円の報酬が入るわけで、みんな誰彼構わず電話しまくります。ただ、苦情も増えるので、電話をかける役目を下請けにやらせるケースもあります」
歩合制となれば当然、高額な商品を勧める傾向が強まるが、「一生に一度のことだと言えば、親は借金してでも金を出す、という認識がある」と業者。
「ただ、そういう中で歩合を荒稼ぎする凄腕の営業マンがいると、他社に引き抜かれたり、独立されたりということもあって競争は激化するばかり。儲かりそうに見えて、油断するとすぐに業績が落ちますよ」(同)
激しい電話セールスもむなしく、「はれのひ」は15年9月期からは営業赤字となり、厳しい資金繰りが続き、取引先や金融機関の信用も落ちていた。結果、成人式当日に数百人単位での被害者を生む前代未聞の閉店騒動をやらかしてしまった。被害者の中には、営業電話によって契約に至った者もおり「あんな電話にさえ出ていなければ」と悔やむ声も聞かれた。
前出業者は「基本、営業電話を激しくするところほど、値段が高いと思った方がいい」と話す。
「歩合報酬を出すわけなので、その分、客に出す値段を高くしなきゃいけなくなるからです。営業電話をしてきた業者はむしろ使わない方がいい、というのが本音です」
「はれのひ」が消えても同じ業態の呉服関連の他社による電話攻勢は続く。成人前の娘を持つ家庭では、業者の選定に慎重さが求められそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)
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