キラキラした青春(性春)に復讐してやりたい!! 捻れ曲がったピュアすぎる官能映画『青春夜話』
#映画 #パンドラ映画館
1993年に刊行された『怪獣使いと少年』(宝島社)は、怪獣ブームを体験した世代の心を揺さぶる評論集だった。活字で組まれたタイムマシンに乗って、時間旅行に連れ出されたような高揚感を味わうことができた。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』、そして『帰ってきたウルトラマン』(いずれもTBS系)といった1960~70年代の特撮ドラマや異形の怪獣たちに夢中になっていた少年時代を、大人の視点を交えた形で再体験させてくれた。『怪獣使いと少年』や『宮崎駿の〈世界〉』(筑摩書房)など、様々なサブカル系評論で知られる切通理作(きりどおし・りさく)氏だが、53歳にして映画監督デビューすることになった。キラキラした青春時代の思い出がない主人公たちが夜の高校に忍び込み、一夜限定でタイムトリップしようとする『青春夜話 Amazing Place』がその処女作である。
評論集『怪獣使いと少年』が読者を少年時代へとタイムトリップさせてくれたように、映画『青春夜話』は主人公たちと共に観客を多感だった10代の頃へと連れ戻してくれる。しかも、大人の視点を交えた形で。老舗映画誌「キネマ旬報」で20年以上にわたって「ピンク映画時評」を連載している切通氏ゆえに、映画の中で疑似体験させてくれる青春時代はフェティシュなエロ描写満載となっている。切通監督は“怪獣使い”ならぬ“官能使い”として未知なる才能を発揮してみせた。
主人公は20代後半の冴えないサラリーマン・喬(須森隆文)と4歳年下のやはりパッとしないOLの深琴(深琴)。路上に座り込んでいたホームレス(切通理作)へツバを吐く中年サラリーマン(川瀬陽太)に喬がカチンと来たことからひと揉めしているとき、自転車で通りかかった深琴は状況を察して初対面の喬を後ろに乗せてその場から逃げ出す。かなり地味めなボーイ・ミーツ・ガールの物語だ。
お互いに表向きはおとなしいけど裏で毒づく性格で、酒を呑んでいるうちに意気投合する喬と深琴。同じ高校の出身だが、喬は4つ年上なのでスレ違いの青春を過ごしていたことが分かる。「見たかったなぁ、深琴さんのセーラー服姿」と控えめに盛り上がる2人。酔った勢いでラブホへ行って、ドンキあたりで買った制服を深琴に着せてJKプレイでもするのかなと思いきや、喬は深琴を夜の母校へと誘う。誰もいない校舎の中へと忍び込み、ロッカーにあったセーラー服、チアガール衣装、スクール水着を深琴に着せ、喬は青春時代に果たせなかった欲望の数々を叶えようとする。
喬のド変態プレイに最初は引き気味だった深琴だったが、「キラキラした青春に復讐したい」という喬の想いには共感を覚える。喬と同様に、深琴も学校ではまるで目立たない生徒だった。華のない自分とは真逆の象徴であるチアリーダーのミニスカ衣装に着替え、夜の教室で踊り出す深琴。イケてなかったあの頃の喬と自分自身にエールを送るために。嫌っていたはずのキラキラした青春だが、羞恥プレイとして演じているうちに次第に気持ちよくなっていることに深琴は気づく。
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