志村けんが共演女性にセクハラする理由と、権力者側が持つべき意識
10月22日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、芸能界における“セクハラ”が俎上に載った。アメリカ・ハリウッドの重鎮であった映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン(65)が、複数の女優やモデル、脚本家や自社社員などから、過去の性的暴行を告発された事件をトップで扱ったのである。
映画プロデューサーとして『シカゴ』『恋におちたシェイクスピア』などの作品でアカデミー賞を受賞しているワインスタインの、過去30年以上にわたるセクシャル・ハラスメントの告発に、アカデミー賞を運営する映画芸術科学アカデミーはワインスタインを除名。ワインスタインが設立した会社TWC(ザ・ワインスタイン・カンパニー)はワインスタインを解雇したうえ、売却を発表した。ワインスタインはヨーロッパのセックス中毒リハビリセンターへ入ったという。
番組では映画芸術科学アカデミーが『性的な嫌がらせを見逃す時代は映画界では終わった』と声明を出したことも紹介し、ハリウッドに激震が走っているとした。松本人志(54)が「でもすごいね、永久追放までいっちゃうんだね」と驚きを示すと、倉田真由美(46)は「でも喜んで権力に取り入って自分で『私はもう売れるためだったら何でもするわ』という人もいるでしょう」と言い、東野幸治(50)も「そりゃあいるでしょうね」と同調、松本も「日本の芸能界にもいますもんね。そういう(野心を持つ)人にとっては、チッて」と発言している。
芸能生活の長い武田鉄矢(68)は「別にびっくりしない。日本の映画にパワーがあったときはそんなこと平気で言う人いたでしょ。私は女優を愛人にしたんじゃない、愛人を女優にしたんだということを平然とおっしゃる映画業界の方がいたんです」と言い、「そういう話はそこらへんに漂ってますよね」と証言。松本は「今も(愛人や枕営業の話は)そこらへんにあるでしょう」とあらためて強調し、東野は「いやいや今はない、バラエティではないじゃないですか」と否定した。すると松本と同じく“ありえる派”のヒロミ(52)が「でも番組に出たいとかでプロデューサーにそういうことをする人はいるんじゃない?」と乗り、「浜田(雅功)の番組はグレーな女がよく出てる」「浜ちゃん一回このコ使ってよ~、というやりとりがあるんじゃないか」と出演者たちは盛り上がった。武田が「でもさあ、その『一回このコ使ってよ』ってすごい差別用語だよ」とたしなめるも、松本は「SとMでいったら、Sの人のほうがセクハラしがちだと僕は感じる。Sの人って、飲みに行っても横に女の人がいたら触ったりする。僕はそういうことするの考えられないんですけど」と話をすすめていく。ここで「よく女の子の尻を触る人」の具体例として名前が上がったのが、志村けん(67)だ。
東野は、「志村けんはカメラが回っていない時間に共演者の女性の尻をよく触っている」ことをフォローするかたちで、志村本人から聞いた話だとして「あれは、女の子に『やめてよ~』と言える空気を作ってあげている。やっぱり志村けんは業界の重鎮だから、女の子が気を遣ってしまわないように、ツッコミやすくしてあげている」と説明した。
ヒロミも松本も「いやいや、それはもう通用しない!」と志村の主張に否定的だったが、武田は「自分も尻は触らないが、(志村と同じ意図で)肩をポンと触るなどする」「人間って隙とか、だらしないとか、みっともないところを見せないかぎり、絶対仲良くならないよ」と力説。一方で「今は何かあるとすぐ大事になるご時勢。『金八先生』のセットの裏側ではパワハラと受け止められかねないようなやりとりはあったもん」「森繁久彌さん(のセクハラ)は、芸のひとつでしたからね」と言う武田は、「ハラスメントという言葉が流行ってから、カウントされるようになった」と、受け手側の問題であるかのようにまとめていた。
「それ」がもう「通用しない」のは、ハラスメントという言葉が流行ったからではなく、社会の意識が少し変化したからではないだろうか。物の見方が変わって、それまでは「当たり前」だとされていたことが、果たして当たり前なのかと疑われるようになって、「もしかして当たり前ではなく、暴力的なことではないか」と認識されるようになった。<本当は別にいいことなのに、悪いこととしてカウントされるようになった>のではなくて、<本当は悪いことなのに、かつては別にいいこととしてカウントされていた>という見方もできるわけである。
関連記事:ワインスタインの性的暴行を「女優が誘う枕営業もあるのに」と軽んじる『バイキング』の異常と、バラエティ番組のエンタメ的売春消費について
同じくフジテレビ系の番組『バイキング』は18日の放送でワインスタイン事件を取り上げた際、坂上忍が「ワインスタインさんがやったことは確かに悪いことなんですけど、逆もありでしょう、女優さんのほうから実力者に」と、『ワイドナショー』で倉田真由美がしたのとそっくり同じ発言をしており、ゲストの梅沢富美男が「(枕営業は)昔からじゃないの。こんなことやっているやつはいっぱいいるよ。気をつけろ、本当、テレビ局も映画監督も」と、権力関係で下に位置する女優ではなく、上の立場の人間に注意を促していた。つまりハニートラップに気をつけろ、ということだ。
両番組からは、日本の芸能界で女性がセクハラや性的暴行被害を訴えれば、たちまち「お前が仕事欲しさに男を誘ったのではないか?」と疑いのまなざしを向けられ、糾弾されるだろうと予想できる。性的な嫌がらせを見逃す時代は、日本ではまだ続いている。
『ワイドナショー』に出演した弁護士は「パワハラやセクハラは絶対的な権力関係があるから生じる。権力者は自分の持っている力に気がついていなくて悪気がないことが多い。そういう意味では、このスタジオにいる方々は、気をつけないと加害をしてしまう可能性がある」と注意喚起したが、志村けんにしろ、スタジオ出演者たちにしろ、まさにその“自分が権力側にいる”と意識することがまず、重要だろう。そして周囲も、大衆も、“権力を持つ者と持たない者”の違いにもう少し敏感になるべきだ。
(wezzy編集部)
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