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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > たつき監督降板で甦る角川お家騒動

『けもフレ』たつき監督降板騒動で甦る25年前の怒り……誰ひとり「コミックコンプ」の恨みは忘れちゃいない!!

 一大騒動となっている、アニメ『けものフレンズ』たつき監督降板騒動。ファンの怒りは日本だけでなく世界へと広がり、署名活動も始まった。降板が明らかになった直後から、ニコニコ動画のプレミアム会員解約をツイートする人も急増。カドカワ株式会社の株価が一時急落する事態ともなり、投資家の注目を集めている。

 この騒動と共に30代後半以上のファンが思い出すのが、あの忌まわしい25年前の記憶である。

 それは、1992年12月のこと。

 当時、角川書店の最有力マンガ月刊誌であった「月刊コミックコンプ」の発売日を、読者は今か今かと待っていた。何しろ『サイレントメビウス』は、ロイが殺され香津美が失踪する急展開。いよいよ連載も佳境に入った『宇宙英雄物語』は、アニメ化も発表されて徐々に情報が解禁されていたからだ。

 だが、発売日。ワクワクしながらページを開いた読者は凍りついた。楽しみにしていたはずの連載が、『銀河戦国群雄伝ライ』を除いては掲載されていない。その代わりに、なんだかよくわからないマンガばかりでページが埋められている。記事ページに掲載されている編集者の名前も、まったく知らないものになっている。

 事態が飲み込めず、唖然とする読者の目に飛び込んできたのは、書店でその横に陳列されていた、見たことのない雑誌「月刊電撃コミックGAO!」。そちらのページをめくってみると「コンプ」に載っていたはずの連載が、タイトルを微妙にいじったりして、そのまま掲載されているではないか。

 それは「コンプ」だけではなかった。「コンプティーク」も「マル勝スーパーファミコン」も、すべてが、初めて見る「電撃」の名を冠した雑誌と中身が入れ替わっているではないか!!

 まだ、インターネットもない時代。何かが起こって、会社が分裂したのだろう程度しか想像することはできなかった。次第に事態が明らかになるのは、角川春樹社長(当時)が麻薬取締法違反などで逮捕され騒動になったこと。その報道の中で、ようやく読者は、春樹氏の弟・角川歴彦が角川書店から独立し、新会社メディアワークスを立ち上げて分裂した“お家騒動”の経緯を知るに至ったのである。

 その後、歴彦は古巣へと復帰。メディアワークスとの両輪によって会社はさらに発展していくことになる。

 けれども、それは読者、あるいはマンガ家にとっては、いまだに許すことのできないことである。今か今かと期待していた『宇宙英雄物語』のOVAは立ち消えとなった。『サイレントメビウス』も絶好調のところで中断(「電撃~」では現在“本作の第0巻”になっている『メビウスクライン』を連載開始)されたため、読者は一気に冷や水を浴びせられた。正直、移籍した連載陣の中には今単行本で読み直しても、明らかにテンションが下がっているものもある。

 どうしようもなさの中で、惰性で両方の雑誌を買い続けていた筆者だが、「コンプ」は正直、同人誌レベル……。その中で唯一、光っていた広江礼威の『翡翠峡奇譚』も廃刊と共に打ち切り……。

 そんな忘れもしない読者への裏切りが、たつき監督降板騒動と共に甦ってきたのだ。

 そう、当時の読者は誰一人として、あの恨みを忘れちゃいないのだ。とりわけ、少ない小遣いで雑誌を楽しみにしていた中高生たちは。

 だからこそ、今再びのファンへの裏切りは燃え上がる……。
(文=昼間たかし)

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