心の障害をバリアフリー化するSEX革命の始まり。非感動ポルノ『パーフェクト・レボリューション』
#映画 #パンドラ映画館
乙武くんをマスメディアで見なくなって久しい。ベストセラー本を連発し、自身の原作小説の映画化『だいじょうぶ3組』(13)に出演するなど超売れっ子だった頃は、「障害があるのに下ネタが得意なんて、すごい!」ともてはやされたが、2016年の不倫報道によって「障害者なのに、けしからん!」と世間の手のひら返しに遭ってしまった。だが、不倫の是非は別にして、乙武くんのモテモテぶりに勇気づけられた少数派も存在した。障害者の性的自立を唱える熊篠慶彦氏がその1人。障害者にも性欲はあるし、SEXしたい、めっちゃエロいこともしたい。障害者を特別視し、“感動ポルノ”の素材として扱う社会の偏見そのものをバリアフリー化してしまおう。そんな野心的な映画が、熊篠氏が企画・原案、リリー・フランキー&清野菜名が主演した『パーフェクト・レボリューション』だ。
出生時に脳性麻痺を患い、14歳のときから車椅子生活を余儀なくされている熊篠慶彦氏。2001年に出版された著書『たった5センチのハードル 誰も語らなかった身体障害者のセックス』(ワニブックス)によると、仲のいい理学療法士の先生に「女を知れば世界が広がるぞ」と勧められて、新宿のシティホテルにホテトル嬢を呼び、筆おろしを済ませている。初体験というハードルを19歳のときにクリアしたことで、彼の世界観はいっきに広がった。「俺も普通にセックスできるじゃん」という喜びが、革命への狼煙となった。以後、熊篠氏はNPO法人「ノアール」を立ち上げ、バリアフリーを導入している風俗店の情報や障害者向けのマスターベーションのノウハウを伝える動画をネット上で公開するなど、障害者たちを性の悩みから解放する運動を進めている。
熊篠氏にとってのヰタ・セクスアリス『たった5センチのハードル』には障害を持つ男性&女性の性事情がありありと描かれていたが、映画『パーフェクト・レボリューション』では、その後の熊篠氏の恋愛事情、SEXに関する切実な悩みが掘り下げられていく。本作を撮ったのは、『まだ、人間』(12)や『最後の命』(14)など他者とうまくコミュニケーションできない人々を描いてきた松本准平監督。「障害者の映画を作りたい」と熊篠氏から企画を打診され、熊篠氏が当時交際していた彼女も松本監督は紹介されていた。その後、熊篠氏は彼女とは別れてしまったが、失恋の痛手を乗り越えるかのように、映画の企画が本格化していく。アダルト産業の一大イベント「アダルトトレジャーエキスポ」にて、TENGAスタッフを通じて熊篠氏と懇意になっていたリリー・フランキーが主演することが決定。エキセントリックなヒロインに『TOKYO TRIBE』(14)で度胸のよさを見せた清野菜名、頼れる介護士役に『接吻』(08)の演技派・小池栄子、と理想的なキャストがそろった。
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