戦国史上最大の決戦に見る日本社会の原風景とは? “三成”加藤剛vs“家康”森繁の超豪華版『関ヶ原』
#映画
司馬遼太郎原作、原田眞人監督の映画『関ヶ原』が8月26日(土)から劇場公開される。1600年に石田三成を中心にした西軍と徳川家康率いる東軍とが激突した戦国史上最大の野戦として知られる関ヶ原の戦いは、両軍合わせて20万人近くが動員されたスケールの大きさから映像化は困難とされてきた。NHK大河ドラマ『真田丸』では、関ヶ原での決戦シーンはわずか1分足らずで済まされてしまったほど。真っ正面から描くことが難しいこの題材を、『クライマーズ・ハイ』(08)や『日本のいちばん長い日』(15)など群像劇を得意とする原田監督は、三成=岡田准一、家康=役所広司というキャスティングで映画化に漕ぎ着けている。だが、司馬遼太郎の『関ヶ原』の映像化はこれが初めてではない。1981年にTBSが三夜連続でドラマ化しており、TBS版『関ヶ原』は“奇跡のキャスティング”と謳われるほどの超オールスターキャストだった。
天下人・豊臣秀吉の没後、豊臣政権を守るために立ち上がる石田三成に、当時42歳で三成とほぼ同年齢だった加藤剛。そして三成の片腕となる侍大将・島左近に三船敏郎。TBS時代劇『大岡越前』でおなじみだった加藤剛と黒澤映画で大活躍した国際派スター・三船敏郎がタッグを組むという贅沢な顔合わせだった。豊臣方の大名たちを籠絡してしまう古狸の徳川家康には、日本芸能界のドン・森繁久彌。そして、家康の腹心の部下・本多正信には演技派・三國連太郎(佐藤浩市のパパ)。この2人が耳打ちしているだけで、物凄く腹黒い陰謀が張り巡らされているような気がしてならない。加藤剛&三船敏郎vs森繁&三國連太郎という、原作小説のイメージにとても忠実な配役。映画版では有村架純が演じた三成の愛妾・初芽には、当時28歳だった松坂慶子が起用され、加藤剛とのベッドシーンを演じている。
他にも“文治派”の三成を嫌う“武断派”の福島正則に丹波哲郎、加藤清正に藤岡弘。親友の三成に命を預ける大谷吉継に高橋幸治、西軍の主力となる宇喜多秀家に三浦友和。そして合戦のキーパーソンとなる小早川秀秋に、『岸辺のアルバム』(77年)で注目を集めた国広富之。さらには北政所に杉村春子、淀殿に三田佳子……、という当時の人気俳優&実力俳優が目白押し。TBS30周年記念ドラマとはいえ、よくこれだけのキャスティングができたものだと感心してしまう。1600年の関ヶ原の戦いと同様に、TBS版『関ヶ原』もその時代のめぼしい俳優たちを総動員したかのようだ。“山内一豊”千秋実に手柄を横取りされる“堀尾忠氏”角野卓造など、細かい配役にまで目が行き届いている。
映画版『関ヶ原』が上映時間2時間29分でタイトにまとめているのに対し、TBS版は第1話『夢のまた夢』1時間50分、第2話『さらば友よ』1時間50分、第3話『男たちの祭り』2時間50分、トータル6時間30分という大長尺。映画版では見送られた名エピソードの数々が、TBS版には収められている。中でも有名なのは、家康が三成たち西軍と激突する前に、東軍側の大名たちを一堂に集めた「小山評定」。家康が率いた東軍は、実は豊臣家に恩顧のある大名たちを主力にした連合軍だった。福島正則らは三成を嫌ってはいたが、東軍としての結束力には疑問が残る。そこで家康は「小山評定」の前夜、福島正則と仲のよい黒田長政を使って入念な根回しを行なっていた。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事