クリエイターにとっての作家性と変態性は同義語!? P・バーホーベン監督が本領発揮『エル ELLE』
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オランダ出身のポール・バーホーベン監督といえば、『ロボコップ』(87)や『スターシップ・トゥルーパーズ』(97)などのエンタメ作品の中にサディスティックなテイストをこってり盛り込んだことで知られている。自分の中の変態性を作品の中にぶちまけることで人気を博してきた。また、『氷の微笑』(92)のシャロン・ストーンや『ショーガール』(95)のエリザベス・バークレーといった“強い女”を愛して止まない監督でもある。最新作『エル ELLE』(フランス語で彼女の意味)では、『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(86)の作者フィリップ・ディジャンの原作小説を得て、持ち前の変態性をいかんなく発揮してみせている。
当初、原作を読んだバーホーベン監督は米国映画として製作し、ハリウッドの人気女優の起用を考えていた。ところが、「これほどまでに道徳に囚われない映画に出演してくれる米国の女優は、一人もいなかった。僕がよく知っている女優にさえも、『不可能だ』と言われたんだ」(バーホーベン監督)という事態に。そこでヒロイン役に急浮上してきたのが、フランスの大女優イザベル・ユペール。若き日のルトガー・ハウアーがヤリチン芸術家を演じた、バーホーベン監督の初期作『危険な愛』(73)をユペールはお気に入り映画に挙げている。そんな彼女が『エル』の主人公にみずから立候補したことで、フランス上流社会を舞台にしためくるめく倒錯ワールドが映画化されることになった。
ミッシェル(イザベル・ユペール)はフランスの新鋭ゲーム会社のやり手社長。愛猫と共に豪邸での独身生活を満喫していた。そんなミッシェルの優雅な生活を破壊する異分子が現われる。白昼、目出し帽を被った男がミッシェル宅に侵入し、ミッシェルを力づくで陵辱したのだ。レイプ犯は自分の性欲を満たすと、金品を奪うことなく去っていった。荒らされた部屋を片付け、浴室で体を洗い流したミッシェルは、警察に通報することなく日常生活へと戻っていく。ミッシェルは警察に対して深い不信感を抱いているが、レイプ犯に襲われて泣き寝入りするようなタマでもない。レイプ犯は一体誰か? 唯一の手掛かりは、レイプ犯のチンコだけ。忌わしいチンコの記憶を頼りに、ミッシェルの犯人さがしが始まる。
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