腐敗警察24時!! 麻薬大国フィリピンの捜査内情を生々しく暴き出した『ローサは密告された』
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警察を見たらヤクザと思え。思わず、そんな言葉が口からこぼれてくる。フィリピン映画『ローサは密告された』は、2016年のカンヌ映画祭で主人公ローサを演じたジャクリン・ホセに主演女優賞が贈られた力作だ。国家権力を楯に警察官たちが庶民を喰いものにして、とことんしゃぶり尽くす様子がドキュメンタリータッチで生々して描き出されている。
本作を撮ったのは、“フィリピン映画第三期黄金時代”の中核となっているブリランテ・メンドーサ監督。カンヌ映画祭監督賞を受賞した『キナタイ マニラ・アンダーグランド』(09)では、警察学校に通う純真な若者が警察組織の腐敗構造にどうしようもなく取り込まれていく姿をやはりドキュメンタリータッチで描いてみせた。イザベル・ユペールが主演した『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』(12)では、ホームレス状態の子どもが生きていくためにゲリラ兵にならざるを得ないフィリピンの社会背景について言及した。目覚ましい経済発展を遂げる一方、激しい社会格差を生んでいるフィリピンのダークサイドにメスを入れ続けている監督だ。本作では主演女優ジャクリン・ホセたちの熱演もあって、スクリーンのこちら側で見ている観客をもマニラの闇世界へと引き込んでいく。
ローサ(ジャクリン・ホセ)はマニラのスラム街で“サリサリストア”を経営している。サリサリストアとはスーパーマーケットなどで袋菓子などを大量に仕入れ、ビンボー人相手にバラ売りしているフィリピン特有の小さな雑貨店のこと。タバコ1本や飴玉1個をバラ売りしているから、当然ながら収益はごくわずか。ローサがいくら頑張っても、夫ネストール(フリオ・ディアス)と4人の子どもたちを食べさせていくのは難しい。そこで一家が食べるのに困らない程度だけ、覚醒剤の密売もしている。近所の少年・ボンボンが「アイス、ちょうだい」と店を訪ねてくるが、これはアイスクリームではなく、シャブの隠語。ご近所の手前もあるので、ローサはごく少量のシャブしか小売りしない実に良心的な売人だった。そんなローサの店はスラム街の風景によく馴染んでいる。
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