運営に問題も……ネットオークション「現金化問題」より深刻な「モンスター出品者」が増殖中!
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ネット売買を仲介する「メルカリ」や「ヤフオク!」で、クレジットカードの現金化ができる「1万円紙幣の実物を上回る金額で出品」などがマネーロンダリングの温床になっているとして問題になったが、その後もSuicaなどチャージ済みICカードの出品などがあり、グレーな出品が後を絶たない。
ただ、ネットオークションサイトでは違法商品よりも苦情が多いのが、利用者同士のトラブル。「ヤフオク!」など運営会社側は、あくまで「仲介」の姿勢を崩さないのが基本で、取引上のもめ事にはノータッチであることが多いといわれる。
そのせいか、利用者の間で困惑の声が増えているのが、モンスター出品者だ。トラブルがあっても平然と開き直ったり、相手に嫌がらせをしたりして苦情を追い払うトンデモ出品者を指すが、「ヤフオク!」では、個人ではなく公認「ストア」として出ている事業者にもそんな連中が存在し、利用者を悩ませているという。
先ごろトラブルになったのは鹿児島県の家具販売業者で、「落札したモノとは別の商品が届いたのに、クレームをしたら評価欄で罵倒され、私の住所まで書かれてしまった」と購入者の女性。取引後のレビューを確認させてもらうと、当初は業者から「とても良い取引ができました」と書いてあったのに、クレームを受けた途端、「落札者が、外人のようで、日本語の理解ができてない」と一変。
その後は「営業妨害をすると法的手段に訴えます」「この異常者め!!精神科に行ってるらしいじゃないか」とまで書いており、あげく落札者の住所が特定できるマンション名を記す始末。その一部記述は、落札者が「ヤフオク!」側にしつこく要請することによって削除されたが、それ以上の対応はないままなのだという。
実際、この業者に取材をしてみると「客が作り話をしている」「客がウソを言っている」の一点張り。購入者からは実際に送られてきた商品を確認し、落札物とは違っていたのは確かなのだが、業者はそれを「証拠がない」と認めようとはしなかった。
購入者によると「証拠としてその商品を送れとは言われたんですが、送料はこちらで払わなければならないというし、はなからウソを言っていると決めつけられ、こんな業者にそのまま送り返したら証拠ごと隠蔽されかねないので返金が先だと伝えましたが、いまだ対応はない」という。
「それどころか、電話を何度もかけてきて『アホ!』と罵倒されました」(同・購入者)
その一部は録音が残っていて聞かせてもらうと、とても客商売をしている者の対応とは思えない。この業者に間違った商品の送付について筆者が問いただすと、「私はネットを使ってショップをやっているだけで、商品は別にメーカーが送ってるだけ」と、代理出品であると弁解。
この業者はほかの苦情に対しても「商品を紹介しているだけの業務」と言い張っており、別のアカウントでも「ヤフオクのルールでは、ショップの場合、在庫なしでも出品してもいい事になっています」と開き直っている。
こうしたトラブルに詳しく『詐欺師の手口90~神出鬼没!パクリのテクニック』(日本文芸社)など著作を持つ作家、東西寺春秋氏によると「ネット通販で客を騙す手合いを、マーケット・プレイス詐欺と呼んでいる」という。
「一般的にこういう業者はクレームが来てもうまくかわせるように、すべて対応方法のシナリオが出来上がっています。注文と違う品物であっても、それだけならまだマシかもしれません。中には客の個人情報をヤミ金などとつながる裏名簿屋に売る者もいるほどです。巧みに金を貪るシステムがすでに出来上がっているんです。ネット売買で厄介なのは、購入する側が詐欺などを立証するのに膨大な労力がかかることで、業者もそれを知っているんです。のらりくらりと逃げていくうちにまた別のアカウントを作って営業を始める。これを一般人が追い込むのは難しいです」(同)
被害者が運営会社や国民生活センター、消費者庁に相談しているうちに行方をくらますことも少なくなく、また「見解の相違」という表現で罪を逃れるケースも多いという。
「間違った商品の送付や、不良についても主観の問題で争えば、利用者が業者相手に問題を法的に立証するのは不可能に近いでしょう」(同)
これを監督するはずの運営会社もまた無責任なようで、あるIT事業者によると「例えば『ヤフオク!』では、安心な取引をアピールしながらも、実際には利用者が運営側にその損害を追及しにくいような規約が綿密に作られていて、あくまで第3者の立場でトラブルに関与しない形になっている」という。
実際、先の購入者も「住所を書かれたのを消してもらうために4度も『ヤフオク!』 にクレームした」と話している。
「いつも同じ文章のマニュアル的な返答があるだけで、何カ月も放置されたあげく、最終的に削除されても通知ひとつありませんでした。安全な利用なんて程遠い。これに懲りたので『ヤフオク!』を使うことはもうありません」(同)
トラブルに関してはさまざまな見解があるとしても、購入者の住所を晒すなど明らかに常軌を逸した業者も現在、そのまま商売は継続中。「ヤフオク!」などはモンスター出品者にとって、まさに天国のような場所のようだ。
(文=鈴木雅久)
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