鈴木清順、若松孝二の“遺伝子”を継ぐ男の咆哮!! 上映時間4時間超のパンクオペラ『いぬむこいり』
#映画 #インタビュー
人間が人間ならざるものと交わり、新しい世界を築いていく異類婚姻譚。現在大ヒット中のミュージカル映画『美女と野獣』や日本神話のひとつ「豊玉姫」など、様々なケースが古くから世界各地に言い伝えられている。そんな異種婚伝説をモチーフにした官能ファンタジーが有森也実主演作『いぬむこいり』だ。人気ドラマ『東京ラブストーリー』(91年、フジテレビ系)でブレイクし、清純派の印象が強かった有森だが、本作では犬男を相手に大胆な濡れ場を繰り広げ、過去のイメージを一掃してみせている。上映時間は4時間5分という超大作で、さらに共演陣は、石橋蓮司&緑魔子夫妻(劇団『第七病棟』!)、「頭脳警察」のPANTA、ジャズパンクバンド「勝手にしやがれ」のボーカル・武藤昭平といった異色の顔ぶれ。どんな物語が展開されるのか予測不能な本作を撮り上げた片嶋一貴監督に、作品に込めた想いを聞いた。
片嶋監督はこれまでもパンクな映画を撮り続けてきた。高校生テロリストたちの暴走を描いた代表作『アジアの純真』(11)は国内外で大いに物議を醸した。小栗旬主演作『ハーケンクロイツの翼』(04)ではアナーキーな青春が描かれ、ブラックコメディ『小森生活向上クラブ』(08)では古田新太がテロリストとして覚醒していった。『いぬむこいり』もまた、アラフォーの元小学校教師・梓(有森也実)が神のお告げから南の島へと渡り、あらゆる世間の常識から身も心も解放されていく物語となっている。なぜゆえ、片嶋監督はパンクな映画を撮り続けるのだろうか?
「確かに『アジアの純真』のときは“こんな世界をひっくり返してやりたい”という強い気持ちで撮っていました。でも、常にパンクな映画を撮ろうと意識しているつもりはなく、自分ではいろんなタイプの映画を撮りたいと考えているんです。まぁ、オリジナルストーリーで作品をつくっていると、自分の中にあるものがどうしようもなく表に出てきてしまうようです(笑)。今回は脚本家の中野太から勧められ、芥川賞を受賞した多和田葉子さんの短編小説『犬婿入り』(講談社)を読んだところ、すごく面白かったので、ドイツにいる多和田さんに連絡して映画化の話を進めていたんです。残念なことに映画化権が手に入らず、それならと多和田さんも読んだであろう『犬のフォークロア 神話・伝説・昔話の犬』(成文堂新光社)という本を参考にして、オリジナルのストーリーを考えたわけです。異類婚姻譚って世界各地にある民間伝承であり、人間の中にある多様性を認識し、新たな再生を願うというもの。でも、今の世界情勢は多様性を認めようとする流れとは逆に向かっている。現代の異類婚姻譚を描くことで、物語そのものがメッセージになりうると考えたんです」
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