マザーテレサもスティーブ・ジョブズもサイコパス!? 隣の“名もなき殺人者”『サイコパス』
#本
凶悪な殺人事件の犯人を指す言葉として“サイコパス”がよく聞かれるようになった。サイコパスの頭の中は、いったいどんなことになっているのだろう? そんな半分怖いもの見たさの好奇心を満たしてくれる一冊が『サイコパス』(文春新書)だ。本書では、脳科学者の中野信子が、サイコパスの頭の中を詳しく解説している。
さて、サイコパスという言葉にはどんなイメージを持つだろうか? 猟奇殺人、異常性癖、尋常ならざる執着……。どれも想像するだけでゾッと鳥肌が立つが、本書によれば、歴史に名を残した多くの偉人がサイコパスであったというのだ。
ノーベル平和賞を受賞し、聖人となったマザーテレサ。多くの貧しい人々を救ったというイメージが濃いが、実際には援助した子どもや側近に対しては、とても冷淡だったそうだ。“奇跡”と呼ばれたその治療法も、キリストに祈りを捧げ、痛みに耐えるように繰り返し唱えるだけで医療的な行為は何一つ施さなかったことが、近年わかってきたという。誰でも受け入れるその一方で、誰にも愛着を持てないというのは、まさにサイコパスの特徴のひとつだそうだ。
サイコパスに共通しているのは「共感性が低いこと」と「恐怖を感じにくい」ということ。「共感性が低い」というのは、相手の顔を見て気持ちを察する部分が恐ろしく低いということだという。
動物を繰り返し罠に仕掛けると、罠を学習して反射的に慎重になる「恐怖条件付け」というものが備わるが、サイコパスは、恐怖を学習しないので、逮捕されるような大胆な殺人を犯し、しかも再犯率が高い。これが「恐怖を感じにくい」という特徴を顕著に表す事例だ。
この2点を含め、最新の研究で、サイコパスの脳内では一般人とは違う動きがあると判明している。サイコパスは、そもそも我々とは違う生き物だとはいえないだろうか?
実は、サイコパスは文明が進む中で登場した存在ではないという。アラスカ北西部の少数民族ユピックには「kunlangeta」という言葉が伝わっていて、意味は「くりかえしウソをついたり、騙したり、盗んだりする男」で、サイコパスのことを指している。同じ意味の言葉は世界各地に確認されており、アフリカの先住民族ヨルバ人の間には「arankan」というものがあり、こちらもサイコパスを意味しているという。
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