傲慢で残酷で美しい青春! 小松菜奈&菅田将暉主演で『溺れるナイフ』を映画化した平成生まれの才人って?
刃物のようにとがった自意識は周囲の人間だけでなく、自分自身も深く傷つける。ジョージ朝倉原作コミックの実写映画化『溺れるナイフ』(講談社)は、10代のまだ穢れを知らないナイーブな自意識がテーマだ。神さまが祀られる神聖な海に主人公たちの自意識は沈み、でもナイフのようにキラキラとまばゆい輝きを放つ。ここ数年は人気コミックを原作にした恋愛映画が次々と作られているが、小松菜奈&菅田将暉を主演に起用した『溺れるナイフ』は強烈なインパクトを観る者に与える。
同じくジョージ朝倉原作の映画化『ピース オブ ケイク』(祥伝社/15年公開)は多部未華子と綾野剛が濃厚な濡れ場を演じた大人のドロドロ恋愛劇だったが、『溺れるナイフ』はまっさらな中学生の男女の出会いから物語は始まる。東京でティーン誌のモデルをしていた15歳の夏芽(小松菜奈)は、親の都合で実家のある田舎に引っ越すことになった。海と山に囲まれたド田舎での生活に落胆する夏芽だったが、神さんが棲むという入江でタブーを恐れることなく泳ぐ地元の少年・コウ(菅田将暉)と遭遇する。髪を金髪に染めたコウは地元一帯を取り仕切る神主一族の跡取りで、傲慢にも「この町のもんは、全部俺の好きにしてええんじゃ」と言い放つ。2人は特別な輝きを放つ存在として、強く惹かれ合うことになる。
同じ中学に通うコウと夏芽は、お互いに意識しすぎて反発しあう状態がしばし続く。夏芽が追いかければ、コウはするりと身をかわしてしまう。そんなもどかしい関係は、東京から来た著名なカメラマン・広能(志磨遼平)が夏芽の写真集を撮りたいと言い出したことから変わり始める。カメラの前で普段とは異なる表情を見せる夏芽。完成した写真集はまっさきにコウに見てほしい。そんな夏芽の想いが通じ、コウと夏芽は交際を始める。地元の中学生たちは誰もが憧れる、美男美女のカップルの誕生だった。さらに広能が監督する映画の主演オファーが届き、夏芽は幸せの絶頂を迎える。だが、地元で最大のイベントである火祭りの夜、夏芽とコウは思いがけない事件に巻き込まれてしまう。ずっと続くと思われた2人の輝きは、一夜にして色褪せていく。
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