亡くなったあの人へ送る、73通の手紙『天国ポスト もう会えないあの人に想いを届けます。』
人は、いつか死ぬ。当たり前のことだが、死んでしまったら、もう会話をすることはできない。けれど、親や兄弟、恋人、友人など、身近な人が亡くなると、伝えたいことや答えてほしいことがたくさん出てくる。
『天国ポスト もう会えないあの人に想いを届けます。』(トランスワールドジャパン)は、“天国ポスト”に投函された1,000通以上の手紙から、73通を紹介した1冊だ。
天国ポストとは、涙を流すことで心のデトックスを図る“涙活”プロデューサーの寺井広樹氏が考案し、直木賞作家の志茂田景樹氏が命名した、もう会えなくなった人に手紙を届けてくれるポストのこと。福島県いわき市にある、元郵便局長の猪狩弘之さんのご自宅の庭にあるポストをメインに、全国各地に設置箇所を増やしている。
誕生のきっかけは、寺井氏が福島県同市で涙活イベントを開催した際に、もう二度と会えない、亡くなった人に「ありがとう」を伝えたい、という声が多数あったことからだという。
紹介されている手紙には、とてもパーソナルな内容が書かれているが、不思議と気持ちが痛いほど伝わってくる。すべて読んだ中で、つい泣いてしまった2通がある。
「お母さん
私のところからはお母さんが見えません。お母さんからは見えていますか?
最後の日の日めくりもあの日のまま、片付けることができないでいます。
それでも思い出してすぐ泣いてしまう事はだいぶ少なくなったように思います。
“元気一番”お母さんが書いてくれたものをみると元気が出ると同時にまた泣けてくる。
私はあなたの娘ですから強いはず。すぐに笑顔になるからね。どこかで見ていてください。
じゃあ、またね。」
「ママへ パパへ
会いたい…会いたい!
でもね…いつもいてくれるよね。時々夢を見ます。
いろいろ片付けなさい! 洗たくすんだの? ごはんは? いっぱい言われて、
でも最後は笑ってゆるしてくれるよね!!苦笑いもあるけど…!
会いたいけど、あんまり思わないようにします。見守ってね!」
個人的な話だが、私の母が、2カ月ほど前に亡くなった。がんだったので、突然ではなく、2年間の闘病中にたくさん話すこともできた。けれど、伝えたいことはいくらでも出てくる。
息を引き取ってから、どうなっちゃったの? 閉所恐怖症だったのに、火葬場の狭いところで焼かれて怖くなかった? ちゃんと天国にたどり着いた? 友達やおじいちゃん、おばあちゃんには会えた? 今、一体どこにいるの――?
正直なところ、返事がほしい。「大丈夫!」そのひと言がほしい。きっと天国ポストに投函した人たちも、そうじゃないかと思う。けれど、いくら待っても返事が届かないことは、みんなわかっている。その現実を乗り越えるために、思い切り泣く。そんな手助けをしてくれる本なのかもしれない。
(文=上浦未来)
●てらい・ひろき
1980年、兵庫県生まれ。同志社大学経済学部卒。涙活プロデューサー。2013年、意識的に涙を流すことで心のデトックスを図る「涙活」を発案。『タカトシの涙が止まらナイト』(テレビ東京)には企画段階から協力している。川嶋あいと絵本『ぼくの天国ポスト』(絵本塾出版)のイメージソングを共同作詞。主な著書に『涙活でストレスを流す方法』(主婦の友社)、『泣く技術』(PHP文庫)などがある。
●しもだ・かげき
1940年、静岡県生まれ。中央大学法学部卒。さまざまな職を経て80年、『黄色い牙』で直木賞受賞。多彩な作品を発表する傍ら「よい子に読み聞かせ隊」を結成、2014年、日本絵本賞読者賞受賞。多ジャンルで活躍し、読み聞かせ&講演の開催数は1,800回を超える。
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