「妖怪通り」が「姉系通り」へ!? 営業許可100周年を迎えた色街「飛田新地」の知られざる今
#本 #インタビュー
「飛田新地」という名前は、近年、急速にその意味を変えつつある。かつては、写真撮影したら「刺される」なんていうウワサがまことしやかに流れ、魑魅魍魎が跋扈するエリアだった。しかし、フリーライターの井上理津子によるノンフィクション『さいごの色街 飛田』(筑摩書房)の大ヒットをきっかけに、ついにNHK『探検バクモン』でテレビカメラがこの街を映し出し、ネットには遊郭の内部を隠し撮りした映像が勝手にアップロードされるなど、飛田をめぐる状況は大きく変わりつつある。
そんな飛田新地で、10年にわたって店を構えていた人物が杉坂圭介氏。これまで、長年にわたって飛田を見てきた彼が、3作目となる著書『飛田をめざす者』(徳間書店)を上梓した。「メイン」と呼ばれる通りで若い女の子専門の店を経営していた彼は、スカウトを経て、今度は熟女たちが並ぶ「妖怪通り」に舞い戻った。日本人客の減少、増える中国人観光客、そして妖怪通りの若年齢化……。今年、100周年を迎える飛田新地には、いったいどんな変化が起こっているのだろうか――。
杉坂圭介(以下、杉坂) 今回の取材は、写真撮影NGでお願いします。取材テープも、絶対に外部には漏らさないでくださいね。
――やっぱり、飛田新地を書くのは、リスクがあるんですね……。
杉坂 バレたら、飛田出入り出来なくなってしまいます(苦笑)。飛田の裏側を描いた第1作目『飛田で生きる』(同)を出した時は、街中で「杉坂って誰や!?」と、捜索されたんですよ。
――怖すぎます! そんなリスクを冒してまで出版された最新作『飛田をめざす者』は、中国人観光客の台頭を中心に、飛田の現在が描かれていますね。
杉坂 『飛田で生きる』で僕が見た飛田の裏側を書いたので、次は飛田で働く女の子の視点から『飛田の子』(同)を書きました。今年は、飛田が営業許可を得て100周年ということもあり、近年の中国人観光客ブームをはじめとする、飛田の今を描いているんです。
――100周年!? そんなに古い歴史があるんですね。
杉坂 そうなんです。だから、飛田の街でも、町会ごとに垂れ幕を作って街を盛り上げています。また、私設消防団や災害用の備蓄倉庫をつくったりして、災害に強い街を目指しているんです。
――魑魅魍魎が跋扈するイメージの強い「飛田」とは思えないほど、地域の絆が強いんですね。
杉坂 20年ほど前までは、経営者同士のケンカが絶えなかったんですが、今は仲良く、ほのぼのとやってますよ。経営者だけでなく、呼び込みのおばちゃんも参加して、消防研修やAEDの講習会が開催されていたりもしますし。
――風俗街の話ではなく、まるで町内会の話を聞いているみたいです(笑)。
杉坂 いまだに借金のカタに取られた女性が働くというイメージが根強いんですが、そんなことはありません! 昔は大門があり、後ろは土手で逃げられない街でしたが、今はまったくオープンな街に変わっています。働く女の子たちも、借金のためではなく、自分で事業を展開するための資金稼ぎなど、明確な目標を持っている人が多いですね。元CAや、医学部生、国立大学の卒業生も飛田で働いています。
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