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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.386

高齢者のセックスや懐エロ特集ばっかでいいの? スクープ報道に注ぐ情熱と誤算『ニュースの真相』

truth-movie01CBSの元プロデューサーによる実録ドラマ『ニュースの真相』。現役大統領に関するスキャンダルをスクープ報道しようとするが……。

 アイドルは一度やると、やめられないという。ステージ上で眩いスポットライトやフラッシュを浴び、世界中の人々が自分に注目しているのだという恍惚感が病み付きになってしまうそうだ。逆にフラッシュを浴びせる側だが、取材記者も一度スクープをものにしてしまうと、やめられなくなってしまう。特にスクープした相手が権力者だと、権力者の裏の顔を暴くというスリリングな行為に心臓をバクバクさせながら例えようのない高揚感を覚えることになる。そしてスクープをものにすると、「もっと大きなスクープを」という欲望に駆られていく。ケイト・ブランシェット主演作『ニュースの真相』は、スクープ報道に熱中するあまり、大きな失敗を招いてしまう取材チームの顛末を追った苦い実録ドラマとなっている。

 主人公のメアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、米国最大手のネットワーク放送局CBSの報道プロデューサー。CBSの看板番組『60ミニッツ』の人気キャスターであるダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)と長年コンビを組み、ダンから深い信頼を得ていた。2004年4月にはイラクのアブグレイブ刑務所での米兵による捕虜虐待の実態をスクープ報道するという特ダネを挙げたばかりだった。勝利の美酒に酔いしれるメアリーのもとに「美味しい肉があるよ」と一通のメールが届く。

 美味しい肉とは取材ネタのこと。フリー記者のマイク(トファー・グレイス)がもたらしたネタは、ブッシュ大統領の過去について。マイケル・ムーア監督がドキュメンタリー映画『華氏911』(04)で取り上げることになる、ブッシュ家とオサマ・ビンラディンが石油利権で繋がっていたというネタ。結局、このネタは採用されなかったが、ブッシュに関するもうひとつの噂を追うことになる。若い頃かなりの放蕩児だったブッシュは、パパ・ブッシュのコネでベトナム出征を逃れるためにテキサス州兵となり、しかも州兵としての義務を果たしてなかったというもの。アブグレイブ刑務所の取材に協力したロジャー(デニス・クエイド)、大学でジャーナリズム学を教えているルーシー(エリザベス・モス)も、この取材チームに加わる。大統領選挙イヤーのタイムリーな企画として、CBSの上司たちはGOサインを出す。

 ブッシュの過去を知る関係者をシラミつぶしに当たったメアリーたちは、州兵時代のブッシュの怠慢ぶりを記した“キリアン文書”に突き当たる。このキリアン文書こそ、美味しい肉だった。だが、メアリーが手に入れた文書はコピーであり、しかも入手経路が曖昧だった。文書の内容を裏取りしたいが、州兵時代のブッシュの上官で、この文書を書き残したキリアン中佐はすでに他界している。この肉はとても美味しそうだが、毒入りかもしれなかった。

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