スクリーンから漂う初々しいフェロモンの香り! 嗅覚を心地よく刺激する『いいにおいのする映画』
#映画 #パンドラ映画館
もしかしたら自分のタイプかも。そう感じた異性とすれ違った瞬間に、ふといい匂いがすると間違いなく恋に陥る。天気のいい日に干した布団にゴロンと転がると、日なたの匂いが鼻孔をくすぐり、たまらなく幸せな気分に包まれる。匂いが人間の感情に与える影響はかなり大きい。『いいにおいのする映画』はその名のとおり、“におい”をテーマにした青春ファンタジーだ。かつてジョン・ウォーターズ監督が『ポリエステル』(81)の公開時に観客に“匂いカード”を配り、場面に合わせてカードをこするとスカンクや靴下の匂いがするというギミックを仕込んだが、低予算の本作はそういう趣向のものではないらしい。ミスiD2015年グランプリに輝いた次世代アイドル・金子理江の初主演作『いいにおいのする映画』は観客に大いなる謎を抱かせつつ幕を開く。
高校生のレイ(金子理江)は熱中するものもなく、将来の目標もなく、ぼんやりと毎日を過ごしている。仲のいい委員長(中嶋春陽)は作家を目指しているが、担任の教師には大学に進学すると無難に答えていた。今しか書けない物語もあるんじゃないかとレイは思うが、唯一の親友にそこまで強くは言えない。そんなとき、幼なじみのカイト(吉村界人)に久しぶりに再会し、かつて自分は魔法使いになることを真剣に願っていたことを思い出す。幼いころ、カイトの母親は病気で入院しており、カイトはよく淋しそうにしていた。魔法が使えれば、カイトの淋しさもたちまち消すことができると信じていたのだ。
カイトの父親モンゴロイドは、大編成バンドVampilliaのボーカリストだ。カイトと一緒にVampilliaが根城にしているライブハウスを訪ねたレイは、バンドMCのミッチーら昔なじみのメンバーに温かく迎え入れられる。個性派がそろったVampilliaのライブは最高だった。音響と照明を担当しているカイトの横で観ていたレイはテンションが上がり過ぎ、ついカイトを押しのけて照明をオペレートしてしまう。それまでモノトーンだったレイの世界がいっきにキラキラと輝き始める。レイがずっと探していた魔法の世界が目の前に広がっていた。
レイは照明技師見習いとしてライブハウスに通い、カイトの手伝いをしながら照明のノウハウを学んでいく。自分の夢を見つけることができ、レイは幸せだった。だが、好事魔多し。レイが興奮のあまり鼻血を流すと、いつもは優しいカイトの目が急にギラつく。ステージ裏の階段で、レイはカイトに押し倒されてしまう。カイトは人の血を欲しがるヴァンパイアフィリア(好血症)だったのだ。カイトの母親も同じ病気で、それゆえにカイトやモンゴロイドを残して姿を消していた。
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