ブラック企業ジャニーズ。SMAP独立を阻止しマネージャーを退職させたメリー喜多川のパワーハラスメント
1月13日から連日のようにスポーツ紙やワイドショーが取り上げ、18日の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)をもって“収束”となった、SMAP解散騒動。25年間世話になってきた飯島マネージャーの退社を受け、ジャニーズ事務所を離れようとした中居正広(43)、稲垣吾郎(42)、草なぎ剛(41)、香取慎吾(38)の4人が、結局ジャニーズ残留を表明することになり、もうこの騒ぎはこれでおしまい。事務所の大恩を理解せず“裏切り者”になりかけた4人を引き止め、激怒する事務所幹部との仲介役に徹した木村拓哉(43)は英雄で、株を上げたことになっている。
だが最高瞬間視聴率37.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と非常に多くの注目を集めた『SMAP×SMAP』での4メンバーによる謝罪は、視聴者に強いショックを与えている。事態の説明は省かれ、生気を失った表情でただただ「申し訳なかった」と繰り返すメンバーたちの様子に、「事務所の内紛が原因なのにタレントが謝ることはない」「独立させてあげてほしい」等々、ファン以外からも大きな声が上がった。ここまで大騒動となり話題を独占するのは、彼らの姿が“別世界のタレント”ではなく、身近なイチ労働者として視聴者の目にうつり動揺させたからに他ならない。何よりおかしいのは、彼らの「謝罪」は、ファンに対してでもスポンサーに対してでもなく、ジャニーズ事務所のメリー喜多川副社長(89)に向けた屈辱的なものだったということだ。まさにテレビの私物化である。
「週刊新潮」(新潮社)ではメリー喜多川副社長が、「週刊文春」(文藝春秋)では同事務所顧問でジャニーズ・エンタテインメント代表取締役の小杉理宇造氏(68)がそれぞれ取材に回答。両誌すらもジャニーズ側のシナリオに沿っている。いずれも、『独立を表明したにもかかわらず事務所に戻るには謝罪が必要だった』との見解を示しており、やはりあくまでも4人が軽率だったせいで騒動が巻き起こったと言わんばかりだ。
だが当サイトでもたびたびお伝えしているように、SMAP独立の火種をまいたのは他でもないメリー喜多川副社長である。昨年1月に行われた「週刊文春」のインタビューで、メリー氏は飯島氏に対して次のように言及した。
「事務所内で派閥を作っているという噂が事実なら許せないこと」
「(文春記者に)そう思わせたとしたら、飯島を注意します。今日、辞めさせますよ。仕事の大事なことって、そういうことだから」
「(メリー氏の実娘で副社長の)ジュリーと対立するなら、SMAPを連れていっても出て行ってもらう」
「うちの娘と飯島が争うなら私は飯島に『出て行け』と言うしかない。だって、飯島は私の子供じゃないんだもの」
「うちの娘が、何で飯島と派閥争いしなきゃならないの? だったら、どうぞ自分のところで別に(会社を)作ってくださいと言うだけ。派閥争いをしたら、飯島がどんなに(仕事が)できても、私は娘の味方です。親ですから、当たり前のこと」
そして昨年6月頃からフジテレビが、飯島氏と仕事上の関わりが深かった局員たちを軒並み番組制作から外し、子会社への出向や異動などの“露骨な人事異動”を断行した(「週刊文春」2016年1月28日号)。飯島氏が追い詰められていったことは明らかだ。
◎パワハラではないのか
前出「文春」インタビューでの、メリー氏から飯島氏への公然叱責は、パワーハラスメントであり解雇通告だ。「文春」での小杉氏インタビューによれば、「あのくらいのことは日常茶飯事」で、メリー氏は日頃から社員や所属タレントに厳しく辛口なところがあるそうだが、それが経営者としてふさわしい態度かどうかは疑問視せざるを得ない。
特定非営利活動法人セクシャルハラスメント協議会が運営する、セクハラやパワハラに関する情報の提供や、悩み相談などを行うサイト「セクハラ110番」によれば、パワハラの基礎知識として「原因の多くは上司の感情と性格的な問題」と説明。わかりやすく分類すると、以下4つの型にすることが出来る。
■攻撃型
・他の社員たちの前で怒鳴る
・ねちねちと嫌味を言う
■妨害型
・仕事の足を引っ張る
・必要なものや情報を与えない
■強要型
・自分のやり方を押し付ける
・責任をなすりつける
■否定型
・人格を否定する
・能力を評価しない
1988年に結成されたSMAPが現在の地位を確立するに至ったのは、ひとえに飯島氏の尽力あってこそだ。光GENJIブームが終わり、アイドル氷河期だった91年にCDデビューするが、ろくなプロモーションも出来ず売れる見込みがなかったSMAPのマネジメントを「私にやらせてください」と直訴し、バラエティや俳優としての道を切り拓いていった。SMAPが売れたからこそ、TOKIOや嵐など後輩ジャニーズグループたちの通る道が出来たと言える。また、彼らが事務所にもたらす利益は年間200億円を超す。こうしたことを正当に評価せず、「娘と対立するなら辞めてもらう」と言い放つことは、果たして「仕事の大事なこと」なのだろうか。所属タレントを公式に「ウチの子」と呼び、家族的な扱いをするメリー氏の姿は、「社員は家族である」と主張していたワタミ株式会社の創業者・渡邉美樹氏と重なる。ジャニーズ事務所は、2016年のブラック企業大賞ノミネートは確実だろう。
◎圧力から解放されるには
SMAPが結果的に独立を断念した経緯も興味深い。スポーツ紙の報道では、独立を画策した4人を受け入れようとする芸能事務所がどこにもなかった、つまり、彼らにそれだけ求められる資質がなかったことを伝えている。しかし単純に考えて、これだけ個々人での知名度が高く、俳優としてもバラエティタレントとしても才能を発揮し続ける彼らを、あらゆる芸能事務所が「ウチには不要」と突っぱねる理由があるだろうか。あるとすればその理由は、メリー氏の逆鱗に触れることを恐れて……に他ならない。
前出「文春」小杉氏インタビューにおいて、小杉氏は「メリーさんが怒って、ジャニーズの歌手を全部引き上げるとか、そんな恥ずかしいことはしませんよ」と発言しているが、各事務所間のパワーバランス、そしてテレビ局との関係においてジャニーズが強い力を誇ること自体は疑いようもない。仮に独立メンバーを受け入れたとすれば、そのプロダクションは業界内での確執を避けて通れないことになる。結局、誰も危ない橋を渡らなかったのだ。しかしその危ない橋が保たれているのは業界全体に蔓延る悪習ゆえであり、誰かが壊してしまえば跡形もなく消えるものではないのか。
芸能人は事務所に所属していても会社員ではなく、事務所にマネジメントを委託する個人事業主。独立したり移籍したりという行動を制限されること自体がおかしいが、芸能界は「そんなの当たり前」という前提で動いている。『報道ステーション』(テレビ朝日系)で古館伊知郎が「事務所あってのタレント」と発言し、その異常性に気付かない愚かさを露呈したが、タレントが在籍しなければ事務所など機能しない。
今回の騒動を、「メリー氏が飯島氏とSMAPをわざとハメた」と見る向きもある。昨年の段階では、ジャニーズ事務所はSMAPの5人そろっての独立に合意し、今年9月の契約更新時期に円満退社となる予定で調整されていたにもかかわらず、12月になってメリー氏が翻意し、移籍予定だった大手事務所にクレームをつけたという。これにより「円満」退社があり得ない状況となり、木村拓哉も「自分だけはジャニーズに残る」と言い出したことですべてが頓挫した。経営者によって大いに振り回された中居ら4人が、生放送で疲れきった表情を見せていたのも仕方のないことだろう。
今後、ジャニーズ事務所との契約を更新したとしても、中居ら4人が従来のような活動を続けていけるかどうか。そのことをファンはもっとも気に病んでいる。飯島氏が去り、メリー氏とジュリー氏が残る中で、のびのび活動していくことができるかどうか。もちろんメリー氏は高齢で、ジュリー氏にトップの座を譲る日は遠くないと見られている。であればこそ、たとえ一時的にテレビから姿を消されることになろうとも、中居らには独立を果たしてほしいと願ってしまうのである。
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