捕鯨船エセックス号を巨大な“怪物”が襲う! 名作小説の元になった実話を映画化『白鯨との闘い』
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今週取り上げる最新映画は、故・森田芳光監督ゆかりのキャスト・スタッフが豪華に集う人情コメディーと、小説『白鯨』のモデルになった19世紀の実話を最新の視覚効果と3D映像で蘇らせた海洋活劇。新人監督による心温まる娯楽作と、ハリウッドの名匠がタブーに挑む衝撃作という点でも、好対照の2作品だ(いずれも1月16日公開)。
『の・ようなもの のようなもの』は、森田芳光監督のデビュー作『の・ようなもの』(1981)の35年後を描くオリジナル作品。落語家一門の出船亭で修行中の志ん田(しんでん)は、師匠から以前在籍していた志ん魚(しんとと)を探すよう命じられる。あちこち訪ね歩いてようやく見つけた志ん魚は、落語とは無縁の中年男になっていた。なんとか復帰させたい師匠の指示により、志ん田は志ん魚と共同生活を始めることになる。
森田作品の多くで助監督や監督補を務めた杉山泰一が、本作で監督デビューを果たした。森田監督の遺作「僕達急行 A列車で行こう」でも主演した松山ケンイチが志ん田に扮し、徐々に上達する落語とユーモラスな顔芸で楽しませる。『の・ようなもの』に出演した伊藤克信、尾藤イサオ、でんでんらが同じ役柄で登場するほか、森田作品ゆかりの北川景子、鈴木京香、ピエール瀧、塚地武雅ら豪華キャストが集結し、同窓会のような懐かしさも。スクリーンに映らないスタッフも含め、森田監督への変わらぬ愛情が心地よく伝わる好作で、きっと鑑賞後に過去の森田作品を改めて見たくなるはずだ。
『白鯨との闘い』(2D/3D上映)は、『アポロ13』(95)、『ビューティフル・マインド』(2002)のロン・ハワード監督が、名作小説『白鯨』の基になった史実を映画化したサバイバル巨編。1819年、捕鯨船エセックス号に乗り込んだ一等航海士オーウェンと21人の仲間たちは、米東岸沖から南下してホーン岬をまわり、はるか太平洋を目指す。クジラの群れを見つけた歓喜もつかの間、白い巨大マッコウクジラに体当たりされた船は沈没してしまう。わずかな食料と水を3艘のボートに移して脱出した乗組員らは、さらに過酷な漂流生活を余儀なくされる。
主人公のオーウェン役は、『ラッシュ プライドと友情』(13)からハワード監督と再タッグとなるクリス・ヘムズワース。自然の猛威を象徴する白鯨がCGでリアルに描写され、オーウェンと白鯨のスリリングな死闘が中盤のハイライトとなるが、そこからさらに壮絶なサバイバル劇が展開する。3D映像では、嵐との遭遇や捕鯨の場面などが臨場感たっぷりに描かれるほか、小物のクローズアップや超ローアングルからの撮影などで変化をつける工夫が効いている。欧米では過去の蛮行とされる捕鯨や、小説で描かれなかったタブーに真正面から取り組む、ハワード監督の変わらぬ挑戦と冒険に脱帽だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『の・ようなもの のようなもの』作品情報
<http://eiga.com/movie/81041/>
『白鯨との闘い』作品情報
<http://eiga.com/movie/79815/>
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