人気シリーズついに完結! カットニスたちの運命は……『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』
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今週取り上げる最新映画は、世界同時公開されるメガヒットシリーズの完結編と、世界初のロボット演劇を映画化した意欲作。どちらも近未来の世界を舞台にしながら、革命の最終決戦をスペクタクル満載で描くハリウッド製アクション大作と、人間存在の内側を見つめる静かなタッチの邦画、好対照な2作品だ。
『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』(11月20日公開)は、人気ヤングアダルト小説を原作にジェニファー・ローレンス主演で映画化した『ハンガー・ゲーム』(2012)シリーズの4作目となる完結編。独裁国家パネムに抵抗する反乱軍は、コイン首相らの思惑通り、カットニス(ローレンス)が革命の象徴となって勢力を増す。大勢の命を奪う戦争を終わらせるため、カットニスは冷酷な独裁者・スノー大統領の暗殺を決意し、ゲイル、ピータらとともに首都進攻を開始。だが、待ち受ける政府軍と無数の罠により、カットニスは一人また一人と仲間を失っていく。
スノー大統領が主催する死のサバイバル競技=ハンガー・ゲームに、妹思いで弓矢の得意なカットニスが出場するところから始まった本シリーズ。完結編では、首都の市街を競技場に見立てた壮絶なラスト・ゲームがスリリングに展開する。矢を放つ姿が凛々しいアクションシーンだけでなく、苦悩や悲しみを経て精神的に成長する過程を繊細に表現したジェニファー・ローレンスは、闘うヒロインとして納得の存在感。2人の男性に愛される三角関係の行方からも目が離せない。反乱軍の参謀・プルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマンは、本作が遺作となった。映画ファンに愛された名優の最後の演技を、しっかりと見届けたい。
『さようなら』(11月21日公開、R15+指定)は、劇作家・平田オリザとロボット研究者・石黒浩教授のコラボ作品であるアンドロイド演劇『さようなら』を原作に、『ほとりの朔子』(13)の深田晃司監督が映画化。近未来の日本で原発が相次いで爆発し、国民は放射能で汚染された国土を離れることを余儀なくされる。政府が決めた優先順位の高い順に日本人が国外へ避難する中、外国人難民で病弱なターニャ(ブライアリー・ロング)と、彼女の世話をするアンドロイドのレオナは、穏やかな暮らしを続けながら、やがて訪れる最期を待つ。
劇団青年団の演出部出身である深田監督は、演劇的な対話の味わいと映画らしい映像の表現力を巧みに使い分け、相乗効果をもたらした。レオナ役には、石黒教授が開発した遠隔操作アンドロイド「ジェミロイドF」を起用。歩行機能が備わっていないので、一部故障して車イスを使っている設定にし、自律型AIロボットとして違和感なく演出した。生と死、人間とアンドロイドといった相反する概念として捉えられがちな組み合わせが、寄り添って共存し、ときには等価であるかのように提示される。「アンドロイドが出演する映画」と聞いてマニア向けか色モノのように思われるかもしれないが、実際は人間という存在の根源に迫る、極めて誠実な作品だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」作品情報
<http://eiga.com/movie/80331/>
「さようなら」作品情報
<http://eiga.com/movie/82572/>
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