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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.349

食人族にカルト狂団!! 阿鼻共感のイーライ・ロス祭り『グリーン・インフェルノ』『サクラメント』

green-inferno01_.jpg『グリーン・インフェルノ』の主演女優ロレンツァ・イッツォ。撮影後、イーライ・ロス監督とめでたくご結婚。

 あまりにもおぞましい地獄絵図は、観る者の身の毛を逆立たせるだけでなく、同時にトラウマ級の感動も与えてくれる。超絶ゴーモン映画『ホステル』(05)で知られるイーライ・ロス監督の『ホステル2』(07)以来となる監督作『グリーン・インフェルノ』は、まさに極彩色の地獄エンターテイメント。自然保護を訴える意識高い系の大学生たちがジャングルに足を踏み入れ、言葉の通じない人喰い族に生きたまま手足を千切られて食べられてしまうという超ブラックな内容だ。悪趣味もここまで極まれば、お見事というしかない。さらに同日公開されるのが、イーライ監督が製作&共同脚本を手掛けた『サクラメント 死の楽園』。1978年に南米ガイアナで起きたカルト教団集団自死事件を再現したドキュメンタリー仕立ての作品で、教祖の指示によって信者914人が服毒死を遂げたというリアルな狂気にさぶいぼが立つ。イーライ監督がスカイプで寄せてくれたメッセージを交えながら、とんでも映画2本を紹介しよう。

 R18指定された『グリーン・インフェルノ』の元ネタは、日本では1983年に劇場公開されたフェイクドキュメンタリーの先駆的作品『食人族』(80)。南米の未開のジャングルへ取材に向かった撮影隊が行方不明に。数年後に撮影済みのフィルムが発見され、そのフィルムには撮影隊が食人族に食べられる様子が収められていた……というグロ~い内容で、当時はマジなスナッフフィルム(殺人映像)だと騒がれた。1972年生まれ、米国のインテリ一家で育ったイーライ監督にとって、『食人族』との出会いは強烈な体験となった。

イーライ「日本盤のレーザーディスクで『食人族』を観たんだ。すでにホラー映画好きだったけれど、あんな映画を観たのは初めてで興奮したのを覚えているよ。まるで本物かと思うくらいの衝撃を受けたんだ。当時はネットもなかったし、映画についての情報も少なかった。食人族は実在するんだと思っていた(笑)。しばらく後で観た『人喰族』(84)にもびっくりした。ティーンだった僕に強烈なインパクトを与えてくれた『食人族』や『人喰族』のトリビュート作品として、『グリーン・インフェルノ』は撮ったんだ。『食人族』を撮ったルッジェロ・デオダート監督らの作品をけなす人もいるけれど、そんな人たちから僕の大切な作品を守りたいという気持ちもあったんだ」

 伝説の映画に出会った自身の極上体験を今の若いスマホ世代も阿鼻共感できるよう、イーライ監督は現代的にアレンジしている。イーライ監督の悪趣味のよさが存分に楽しめる。都会で暮らすお嬢さま大学生のジャスティン(ロレンツァ・イッツォ)は環境破壊に抗議するアレハンドロ(アリエル・レビ)らの活動に興味を覚え、共にアマゾンの奥地へ。違法な開発工事が進む様子を動画中継し、世界中に配信する。デジタルツールを駆使したアレハンドロらの頭脳戦は成功し、工事は中止を余儀なくされる。勝利に酔いしれる学生たちは帰りのセスナ機に搭乗するも、エンジントラブルでジャングルのど真ん中に墜落。彼らが救ったはずの未開の裸族に生け捕りとなり、学生たちは一人ずつ、目玉をくりぬかれ、舌は刻まれ、内蔵はすすられ、キレイに丸ごと食べられてしまう。たった数日前まで快適な都市生活を享受していた彼らは、あまりの環境の激変ぶりに発狂寸前。テクノロジーの進化がデジタル世代の若者たちを気軽な冒険へと駆り立て、そのことが“人体の踊り喰い”という究極の身体的痛みと絶望へと導いていく。

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