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「国民的美少女コンテスト」グランプリ女優の怪演が光る! 今週公開『罪の余白』『ロバート・アルトマン』

movie1001(c)2014 sphinxproductions/10月3日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開

 今週取り上げる最新映画は、“国民的美少女”吉本美憂が他人の心を操る悪魔的な女子高生を演じる衝撃作と、70年代から今なお色あせない傑作群を数多く生み出した名監督の、刺激的なドキュメンタリー。秋の観賞にふさわしい、作品の個性が深い余韻を残す2本だ(いずれも10月3日公開)。

『罪の余白』は、芦沢央の同名デビュー小説を、『スープ 生まれ変わりの物語』(2012年)の大塚祐吉監督が映画化した心理サスペンス。名門女子校の教室で、スクールカーストの頂点に君臨する美少女・咲の言葉に促されるように、同級生の香奈がベランダの手すりに立ち、転落死する。娘の死を受け止められない行動心理学者の安藤は、真相を知るため香奈の級友たちに接触。他人の心を狡猾に操る咲こそが娘を死に追いやった張本人だと知った安藤は、復讐心から次第に暴走してゆく。


 スクールカースト、生徒の死、娘を失った父の真相探求と暴走といった要素は、中島哲也監督・役所広司主演の『渇き。』(14年)と多く共通する。だが、『渇き。』では父や刑事ら主要キャラが戯画的で、いかにも虚構の世界の物語として描かれたのに対し、本作は内野聖陽扮する理知的な教職者の父親が、自責の念と咲の策略から復讐へと突っ走る過程がリアルで生々しい。「国民的美少女コンテスト」でグランプリ受賞、CMやドラマでも活躍する吉本美憂が、一見穏やかな仮面の下に底知れぬ悪意と狡猾さを秘めた“モンスター”咲を恐るべき説得力で体現。内野と吉本が迫真の演技で繰り広げる心理戦と、思わず声を上げてしまう衝撃のラストが強く印象に残る問題作だ。

『ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』は、ハリウッドの映画製作システムと戦いながら、『M★A★S★H マッシュ』(70年)、『ザ・プレイヤー』(92年)、『ショート・カッツ』(93年)など多彩な傑作を生み出し、世界中の映画人と観客に愛された故ロバート・アルトマン監督の実像に迫るドキュメンタリー。アルトマンの経歴と作品群を、自身の肉声と、ポール・トーマス・アンダーソン監督、ジュリアン・ムーア、ブルース・ウィリスら映画人の証言を交えて解き明かしていく。

 “アメリカ・インディペンデント映画の父”と称され、カンヌ、ベルリン、ベネチアの三大映画祭の最高賞をすべて制覇したことでも知られるアルトマン監督。嘘八百を並べて映画業界に入ったという序盤の話から笑わされ、型破りで波瀾万丈なその映画人生と、独立独歩の精神=インディペンデント魂がユーモアたっぷりに描かれる。時折挿入される、アルトマンが家族を撮影したホームムービーにもなごまされる。監督のファンだけでなく、よく知らない人でもきっとアルトマン作品を見たくなる、監督の個性と魅力を的確に伝えるオススメの良作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『罪の余白』
http://eiga.com/movie/81367/

『ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』
http://eiga.com/movie/82154/

最終更新:2015/10/02 23:00
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