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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > キック・アスが蘇る『キングスマン』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.339

究極のフェチズムと暴力がもたらす危険な陶酔感! “キック・アス”の興奮が蘇る『キングスマン』

kingsman_movie01小道具へのこだわりに、スパイ映画ならではのフェティッシュさを感じさせる『キングスマン』。ハリーはエグジーに紳士の着こなしをレクチャーする。

 家庭環境に恵まれなかった人間が、世間から後ろ指をさされたり同情されたりせずに済む方法は2つある。ひとつは昔からの悪友たちとつるんで、一生狭い場所で暮らしていくか。もうひとつは広い世界に出ていって、他人から笑われないよう自分を磨き続けるか。そのどちらかしかない。映画『キングスマン』に登場する若者エグジー(タロン・エガートン)は、失業者や犯罪者たちが溢れ返る肥だめみたいな街でずっと暮らしてきた。父親は早くに亡くなり、母親はDV男と同居し、国からの生活保護費だけを頼りに生きている。のちに国際的諜報機関キングスマンの一員として巨大悪と戦うことになるエグジーは、まずは自分自身のクソったれな生い立ちと戦わなくてはいけなかった。

 原作は人気コミック作家のマーク・ミラー、脚本&監督はマシュー・ヴォーンという大ヒット作『キック・アス』(10)のコンビによるスパイアクションが『キングスマン』だ。着る物といったらジャージしか持っていなかったストリートキッズのエグジーが、格闘術・観察眼・交渉能力に秀でた超一流スパイであるハリー(コリン・ファース)と出会うことで、スーツ姿が似合う一人前の紳士へと生まれ変わる過程が描かれる。男の子版『マイ・フェア・レディ』(64)か『プリティ・ウーマン』(90)といった趣きがある。女性だけでなく、男もいつだって変身願望を抱いているのだ。

 エグジーの実の父親は、キングスマンに所属する優秀なスパイだった。だが、キングスマンの存在は公表されておらず、ただ出張先の事故で亡くなったとだけエグジーは聞かされていた。夫を失ってからの母親はアル中やDV野郎とばかり付き合ってきた。ダメ人間同士がお互いの傷を舐め合う共依存ってヤツだ。そんな状況を憎むエグジーも学校を中退し、おちこぼれ仲間と街をうろついている。負のスパイラルから、どうにも抜け出せない。そこにオーダーメイドのスーツをバリッと着こなした英国紳士ハリーが現われ、「君のお父さんは素晴しい人物だった。私が生きているのは、君のお父さんのお陰だ」と命の恩人の遺児であるエグジーに救いの手を差し伸べる。スパイ養成合宿に参加して、生まれ変われと言う。

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