日本はドイツのような分断国家になる寸前だった!? 敗戦処理内閣の苦悩『日本のいちばん長い日』
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もしポツダム宣言の受諾があと数日遅れていたら、広島・長崎に続く第三の原爆が京都、もしくは小倉、新潟に投下されていたかもしれない。沖縄戦のような壮絶な地上戦が、米軍を相手に九州でも繰り広げられていたかもしれない。南下してきたソ連軍によって北海道は占領されていたかもしれない。8月15日は日本人にとって特別な意味を持つ1日だ。終戦関連のテレビ番組の多くで玉音放送(昭和天皇による終戦の詔書)を耳にするだろう。では、現人神だった天皇が国民に肉声で敗戦を告げる前代未聞の玉音放送が決定するまでに、政府と軍部の間でどのような攻防があったのか。日本が連合国に無条件降伏した1945年8月15日に至るまでの舞台裏をクローズアップした歴史群像劇が『日本のいちばん長い日』だ。
『日本のいちばん長い日』は1967年にも映画化されている。岡本喜八監督による東宝版『日本のいちばん長い日』は、オールスターキャストによる超大作映画だった。最後まで徹底抗戦を主張した陸軍大臣・阿南惟幾(三船敏郎)と、阿南の剛直さをのほほんとかわす鈴木貫太郎総理(笠智衆)とが対称的に描かれていた。戦争を実体験した世代ならではの迫力と重厚感がモノクロフィルムに焼き付いていた。『クライマーズ・ハイ』(08)や『駆込み女と駆出し男』(上映中)などを手掛けた原田眞人監督による『日本のいちばん長い日』は、阿南陸相と鈴木貫太郎総理の家庭人としての素顔も織り交ぜ、現代的にソフィスティケートさせたドラマとなっている。そして、何よりも岡本監督作との大きな違いは、昭和天皇を真っ正面から描いていることだ。岡本監督作では八代目松本幸四郎(松たか子のおじいちゃん)が昭和天皇に扮していたが、遠景か背中のショットだけだった。アレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』(05)を観たことで本作の企画を思い立った原田監督は、昭和天皇(本木雅弘)、阿南惟幾(役所広司)、鈴木貫太郎(山崎努)の3人の男たちの関係性が日本全土の焦土化を回避
しえた重要な鍵として捉えている。
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